先立たれる前に

【はじめに】また独身になるということ

 子供がいない夫婦、
または子供はいても遠隔地で同居の可能性が皆無な夫婦

 今はお互い元気で暮らしていますがどちらかが斃れたら?
それもある日突然の事故や急病だった場合は?

 分身のような存在だったパートナーが突然いなくなった場合、
今まで同様の生活を残された貴方は送ることが出来ますか?

 お互いがまだ元気なうちに、何が出来るでしょうか?

 

 

持ち家の場合、バリアフリー化の検討

 2階建ては無論の事、平屋の場合であっても
各部屋の入口にほんの少しでも段差があるようであれば要注意です。

 何かの拍子に躓いて転倒、骨折、打撲の結果、
そのまま寝たきりになることはよく耳にします。

 レアケースですが、
布団で生活している方が敷きっぱなしの布団に躓いて
腰の骨を折るほどの重症になったというケースもあるほどです。

 ベッドならつま先で躓くことはまずないでしょうが、
寝ぼけてベッドから転落して骨折したというケースを知っています。

 寝具への備えは足腰に衰えを感じる前に対策を考えるべきでしょう。

 階段には手すりの設置、
各段差にはフラットになるよう敷物を用意する等
業者との打合せや適当なグッズ探しに出かけるのも
お互いが元気だから出来るのです。

 階段の手すりにしても、
付ければいいというものではないのです。

 夫婦で身長差がある場合は
それを考慮して設置の高さを考えなければいけません。

 旦那さん目線だけで決めてしまい、
奥さんには使い勝手が甚だ悪いとなれば、(その逆もあります)
せっかくのバリアフリー化も意味をなさないもので終わります。

 

 

家具や日用品のスリム化

 子供と同居時の基準で揃えた食器や電化製品も
2人だけの生活になった今ではただのお荷物です。

 必要な数に絞って食器類を整理しましょう。
子供に引き継がせるも良し、場合によってはフリマで処分も良しです。
不用品として引き取ってもらうのもアリです。

 以前の子供部屋や子供夫婦の部屋に
置き去りになっているエアコンや扇風機、

 食器棚を圧迫しているだけになった子供用の食器類や
押し入れを占拠しているだけの学生時代の品々など、

 出来れば夫婦2人の協議で
処分を決めた方が効率的に進められます。

 まだ使えるから勿体ないという気持ちは
特に高齢者になればなるほど強いものがあります。

 これも実例ですが、
大型の掃除機を持って2階の掃除に上がる際にバランスを崩して
階段上から一階まで転落してしまい、ほぼ1年間入院したとと言う
重大事故に遭遇したケースもありました。

 今では小型軽量でも
従来品以上の性能や機能がある新製品は山ほど出ています。

 まだ使えるから買い替えを控えるのではなく、
今の自分たちには使えないから買い替える、
という意識チェンジも必要です。

 他にも
寿命が長く省電力にも貢献するLED電球への交換も
検討の価値ありです。

 確かに高額品ではありますが、
交換の手間が大幅に省けることを優先して下さい。

意外に球切れの交換時に脚立から転落した、
手抜きで適当な椅子の上に立って作業した際に
足を踏み外してテーブルの角に激突したといった
事故を起こしています。

 危険を伴う作業をしなくなるための投資として、
割高と思わずLED電球への交換を考えてもらいたいのです。

 特に夫が長期入院や先立った場合に、
遺されたのが背の低い部類の奥様だった場合、
高所での作業はハイリスクこのうえなしです。

 

 

趣味の品の始末

 この場合に関しては、
お互いが自分の趣味品を処分するのは苦痛を伴うにせよ
自己責任で決断が下せます。

 ですが、
パートナーの趣味品の処分には
より強い抵抗が生じます。

 亡くなったパートナーが生涯かけて集めた品や、
自分で作ってきた手芸品や焼き物など、
今の自分には全く無用な品であっても、
いざ処分となると相当の抵抗が生じます。

 こういった個人的な品々については
特にお互いが元気なうちに、万が一の場合はどうして欲しいかを
相手と話し合っておくべきでしょう。

 場合によっては
処分先の情報や同好の士の連絡先などを共有することで
意思に沿った形での処分が出来るのです。

 特に、よく相談者の口から悩みの種として
出てくるのが、書籍収集家の悩みです。

 今では入手困難な絶版本、古書の類などに加え、
固有の作家のデビュー作から現在に至るまでの全ての書籍、
有名作家の初版本ばかりを収集したといった場合、
遺産相続の対象になることも十分あり得ます。

 勝手な判断で譲った後になって
その財産価値が明らかになり、相続人間での争いの素になったり
生前贈与を受けた側に思わぬ迷惑をかける場合が出てきます。

 その前に、
書物と言うものは「場所を取る、かさばる、重い」
という厄介な特徴があります。

 若いうちであっても
一念発起して本棚の整理に取り掛かっても
その分量や途中で流し読みに奔ってしまい
時間のわりに進捗が見られず、
結局途中で頓挫してしまうといった話はよく聞きます。

 これが高齢になれば
より肉体的にも負担が増しますし、
執着心は若い頃より倍増しています。

 一気にすべてをやろうとせずに
一つの棚ごとに処分するといった長期計画で取り組まないと、
最後はパートナーに全ての尻拭いを強いる羽目になります。

 個人的には肯定的ではないものの、
電子書籍への転換はひとつの始末の方法と思います。

 小さな画面で読みにくい、
 細かな操作が煩わしい、
 実際の本のページを捲る時の期待感や高揚感がない。

 いろいろ違和感や不便さがあることは承知の上ですが、
本で場所を取らないという一点だけは素晴らしいものです。

 同様に関心のない者には無用の長物となるのが
レコード盤、CD以前の30センチサイズのLP盤と言うものです。

 これもマニアの方の中には千枚単位でコレクションしている
1万枚に達したといったコレクターも少なくありません。

 これも場所はとるし、保管には書籍以上に神経を使います。
中には相当額の貴重品も存在しますからあっさり廃棄も出来ません。

 人によっては団体や財団、または大学等の機関への
一括寄贈と言う方法を考えている方もいますが、
なかなかうまくマッチングしないのが現状のようです。

 

 余談ですが、
おひとり様の私の最大の頭痛の種の趣味が、
長年収集してきた膨大な量の書籍に加えて
部屋の一角を天井まで占める1,000隻を超える艦船模型です。

 特に後者は同じ趣味の方に受け渡そうにも
こんな量をそのまま引き受けられる方はなく
どこかの施設や博物館などでの寄贈を考えても
せいぜい数隻単位の話でしかありませんでした。
いずれは私の終活の中で最大の壁になると自覚はしています。

 このようなタイプの趣味をお持ちの方は、
是非元気なうちに「仕舞い方」を考えるべきでしょう。

 

 

クルマ依存の生活だった場合

 一戸建てのマイホーム、
でも郊外に建てた為、日々の買い物や通院などは
全て夫の(妻の)運転する車が全てだった場合、
そのパートナーが運転できなくなった場合の対策についても
お互いが元気なうちに考えるべき課題です。

 ネットスーパーの契約が可能かどうか? 
最寄りに買い物代行サービスがあるかどうか?

 公共交通機関があったとしても
郊外では人口減少によって一日の運行本数の削減や
路線の統廃合で今までのような使い勝手が突然失われるケースも
想定しておきたいものです。

 この手の情報は数か月前には告示されるはずですから、
情報収集にも注意を払わなくてはいけません。

  2人だけで考えても限界がありますから、
地域の包括支援センター等へ積極的に足を運び
今からでも利用可能な公的サービスの内容について調べておくなどの
事前の備えもしておいて損はないはずです。

 

 

【まとめ】一人で出来る事と二人で出来る事

 以上、2人で暮らしているときには気にもし無かったこと、
仮に一人になった時にも今まで通りできることは何か?
逆に2人だったから出来ていることは何か?

 面倒がらずに時間の許す限り、いろいろな場面を想定しましょう。
こうなっては厄介だ、こうはならないだろうといった
勝手な都合のいい判断をしない為にも、2人で相談することが重要なのです。

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この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
フェイスブックページ「50歳からの人生設計相談室」
ブログ「新・先憂後楽」
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