シニアが行う終活は誰の為?

【はじめに】

 終活を始める
最初の想いはどこへやら、いざ室内整理や家財処分に
手を付け始めてすぐに「結構大変だ」「まだ早くないか?」
など等、適当な理由を付けて中断、撤回するケース、
貴方には覚えはありませんか?

 ですが自分にとって重荷な作業は
子供や配偶者、親族にとってはより煩雑で
負荷のかかる作業となること、よく認識して下さい。

 

【災難は突然にやってくる?】

 私の知っている範囲での話になりますが、
終活相談に来られた相談者の中では2つのタイプに分類できます。

 ひとつは、新聞や雑誌の記事に促されてとか
家族からの要請で仕方なく、とりあえず終活とはなんぞや?
といった気持ちで相談される方です。
概ねこのタイプは「まだ他人事」「参考程度に」といった
雰囲気が感じられます。

 もうひとつは、以前に事故や病気で万が一ということに
真剣に向き合った経験者や自分自身が親の死後の煩雑な手間を
実体験したといった身を以て終活を経験した方です。

 このタイプの方は相談時に既に具体的な問題や不明点を
ピックアップして相談に来られます。
実に時間効率よくピンポイントでのやり取りが出来ます。

 毎日同じルートで朝のジョギングや散歩していて
目をつぶってもコースは分かるといった方が
ある日認識していたはずの僅かな段差で転倒し
下半身を骨折、長期入院に至ったケース。

 自分では注意を払っていても
もらい事故や巻き添えで大けがをするケース。

 以前から片付けようと思っていた家財整理を
衝動的に始めてぎっくり腰になり長期リハビリとなったケース。

 年齢に関係なく災難は予兆なしに発生するのです。

 「まさかこんなことになるなんて」
 「自分に限ってミスはしないと思っていて」

 後悔先に立たずです。

 こうなってしまってからは自分で動くことが出来ず、
この時点から終活について家族や親族に委ねることになるのです。

 

【自分でも分からないことが多すぎる?】

 これも多数の方からの経験談として聞いた話です。

 「保険証はこの棚に入れてある。」
 「いつも使う銀行の通帳とカードはこのかばんに入れてある。」
 「実家のスペアキーは右の引き出しの中。」

 いざ家族がその場所を探しても、ない!?

 こうなると当人も焦ってしまい、下手をするとパニックになります。
 ~あの時にはあった、その後の記憶が曖昧
 ~もしかしたらあの場所に移していたかも?

 質が悪いケースになると
 ~しっかりと探せ! 絶対にある!!
 ~本当はあったのにわざとないと言っているのでは?

 など等、疑心暗鬼に陥って家族に疑念を持ってしまうという
笑えない悲喜劇に繋がることもあるのです。

 何の気なしに移動させたケースで紛失騒ぎ?
若い世代でも必ず覚えはあるはずです。
いくら探してもなかったものが想定外の場所にあった、
自分に覚えがなくても、自分がやった以外にはあり得ない。

 メガネや時計程度であれば苦笑いで済みますが、
さすがに預金通帳や実印、権利証などと言った「重要品」であれば
迷えば迷う程青ざめるのは当然のことでしょう。

 実際の例では記帳済みの過去の通帳の保管場所と
現在使用中の通帳の保管場所を入れ違えて記憶していて
家人から指摘された途端パニックになり総出で家探しした
といったケースもあったのです。

 貴方も自分が保管している重要品の場所、
ここで紹介したような事態を避けるためにも
元気なうちに全て記憶通りの場所にあるかどうか、
確認してみては如何でしょうか?

 情報の整理が出来ていないことは
結局自分自身への負荷となって返ってきます。

 補聴器を使用している方が
入院を余儀なくされ、電池の保管場所を
失念した為に家人に自宅から回収して欲しいと
依頼したくとも場所を教えることが出来ず
延々とさがしたあげくに結局新規購入となり
その間音のない世界を余儀なくされた方。

 長期入院となりこれまで利用していた
宅食サービスや新聞、定期購入の雑誌を
一時休止にしたくともその連絡先が分からない、
自宅のどこかにメモしたノートがあるが
どこに置いたかを覚えていなため
退院まで延々と費用が発生してしまった方。

 貴方は自分は絶対こうならないと
自信を持って言えるでしょうか? 

 

【家族への負担に配慮を】

 自分だけにツケが回るだけならいいのですが
多くの場合家族が代役となって事に臨むことになります。

 同居ならいいのですが、
最近の例ではほぼ子供家族とは別居で
それなりに遠距離にひとり暮らしするケースが目立ちます。

 入院時にうっかり持ち出し忘れた書類や品物、
自分で動けなければ、頼む相手は遠距離に暮らす子供です。

 たった一枚の書類の為に2時間かけて帰省する。
役所への申請や提出となれば「平日の開庁時間内」にです。

 サラリーマンであれば、職場の目もありますが、
まだ事情を説明して有休を取得しての対応も可能です。

 ですが自営業、特に飲食や物販を個人で経営していたら?
一日の臨時休業で済めばまだしも、泊りがけとなれば?
毎日の売り上げが収入の全てと言った場合、死活問題にも。

 中途半端な距離であれば(クルマで片道2時間など)
やはり子供としては無理をしてしまうでしょう。

 いくら若いと言っても、連続してこのような動きを
続けていれば疲労も蓄積し、注意力にも影響が出ます。
最悪の場合、子供が事故や疲労で動けなくなることも!

 こうなってからでは親として後悔してもしきれないはずです。

 

【終わりに】

 如何でしょうか?
最近は終活の相談者には必ず上記の内容を取りまとめて
事前にするように心がけています。

 説明しているうちに相談者の表情が変わることも
少なくありません、たぶん思い当たる節があったのでしょう。

 自分だけが苦労するだけならまだしも
子供家族にこれだけの負担(迷惑)をかけることになる
その恐れについて認識不足だったと想いを語る方もいます。

 

 結局のところ、シニアが自ら行う終活=生前整理とは
親が最後に子に与える「子供孝行」と言えるものだと私は考えます。

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この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
フェイスブックページ「50歳からの人生設計相談室」
ブログ「新・先憂後楽」
コラム「マイベストプロ東京」
行政書士の寺田淳がマイベストプロ東京で相談受付中

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