【はじめに】終活はどう始めますか?
今年に入って終活の相談が増えてきています。
面白いことに、親からも子供からも共通した問い合わせなのです。
「終活の話はどちらからした方が?」
「終活についてどういう話から始めたらいいか?」
といった内容で、親の側としては何から話したらいいのかが分からない。
この側からすれば、当然ながら自分から切り出すのは地雷を踏むのでは?
といった思惑が交錯して、立ち往生しているようです。
ここではあくまでも一つの参考事例として紹介しますが
これが絶対というわけでは勿論ありません。
親から切り出せる話題、子から切り出せる話題の一例として
以下に紹介したいと思います。
親から子へ
いきなり遺産相続や、財産目録の話題を切り出すのは
子供間に疑心暗鬼を生じさせるのではと懸念してしまい、
結果として先送りのまま、これではいけません。
切り口としては、
親の(履歴書的な)生い立ちを伝えることから始めてみませんか?
親の出生地やこれまで居住してきた土地の話、
進学によって初めての一人暮らしや就職での転居、異動経験。
自分にとって生活環境が180度変わる経験はどういう結果を招いたか?
仕事も転職していればその際の話も加えてみましょう。
何故転職したのか? 前の仕事は何だったのか?
子供が会社員であれば必ず興味を惹くはずです。
自分の両親(子にとっては祖父母)の話、
兄弟や親せきの話等もわざわざ子には話さないのではないでしょうか?
親から話さなければ、子の側が関心を持つことはないですし、
その存在すら知らないといった驚きの事実が発覚するかもしれません!?
中には、自分の再婚の話、異母兄弟、異父兄弟の存在なども、
早い段階で出来れば伝えておきたい話題の一つでしょう。
その他にも郷里に一族の墓があればその事実を確実に伝える事や、
仮に郷里に菩提寺があれば、その存在を伝えることも大切です。
小さいころに墓参りに連れて行ったからと勝手な判断は止めましょう。
子供の記憶は当てには出来ませんし、肝心の郷里や菩提寺を記憶違いのまま
今の今まで覚えていたというケースも実際にあったほどです。
念には念を、知っていると言われても正しい情報は伝えるべきです。
例えば自分もサラリーマンだった場合なら、
なぜその仕事を、その会社を選んだのか? その選択は正しかったのか?
といった今だから言える証言なども会話を弾ませる話題です。
各年代ごとにあったはずの仕事上での思い出話もいいでしょう。
成功談、失敗談、楽しい思い出や苦しかった事等は話し易い筈です。
但し、注意すべきは変に評論家目線で教訓話にはしないことです。
「だからお前はこうしなくてはいけない」つい親心からの一言、
でもそれが子供には押し付けと感じることは少なくないのです。
仕事ばかりの話題ではすぐに息詰まるというならば、
自分が子供の年齢の頃の世相や流行、ヒット商品や食べ物の話がいいでしょう。
昭和の話は今や一周回って新たなトレンドになりつつあります。
親子共通の話題に出来れば、その後のやり取りもスムースにいくでしょう。
いい話や面白い話ばかりでなく、
親から見ての祖父母や、親の葬儀の話(子からみれば曾祖父母や祖父母)
も子供にすれば未経験の話でしょう。
今や親子3代同居という事例は減少の一途で、身近で葬儀を経験したという
子供世代は非常に少ないです。
私の周囲でも遠方の為祖父母の葬儀に出なかった、
中には入試勉強中だった、遠方へ赴任した直後だった等などの理由で
亡くなったことも葬式の件もあえて伝えられなかったという事例も含めて
数例ありました。
葬儀の流れとその際の苦労話等は、伝えておいて損はないですし、
子供としても葬儀の具体的なイメージを持ち易くなるのです。
話の途中で、子供の方から「今の終活」に関連した質問や
問いかけが出てくればその場で話を切り替えて自分たちの終活について
話し合いの場としてもいいでしょう。
肝心なことは、親子で終活を考える場を作ることなのですから。
子から親へ
会話の発端を見つけにくいのはよく分かります。
無難な話題であれば、今も交流のある友人知人について問いかけましょう。
どういう関係なのか?学生時代、社会人時代の同僚や先輩後輩なのか?
趣味を同じくする仲間なのか? さらにはどの程度の付き合いなのか?
話しているうちに、
今も交流を続けている親友や知人の存在は自然と強調されます。
最も分かりやすいのは年賀状や季節の挨拶を続けているリストから
万が一の際には、必ず連絡して欲しい相手は誰かを婉曲に聞き出せます。
親からの話題の中で転勤族の話題が出たら、
当時開設していた地元の金融機関の口座解約についての確認をしましょう。
既に給与が銀行振り込みだった場合は必ず口座は開設しているはずです、
ですが異動の際に度忘れして解約しないまま今に至るというケースもあるのです。
もし親とは別居しているならば、最近の健康状態の情報は重要です。
かかりつけ医の確認を始め、常備薬や既往症、アレルギー発症の有無等、
重要な情報に関しては優先的に話題にすべきです。
他には、子供自身で現物を確認していない実家や土地の権利書、
自宅の売買契約書等の重要書類の現認も欠かせない話題です。
さらにはその保管場所の確認も忘れてはいけません。
貸金庫に保管しているならばその金融機関名、
自宅や仕事場のロッカーなどに保管しているならその場所での確認。
財産価値のあるものについて子の側から切り出すのは
財産狙いとみられるのではと危惧する方もいますが、
変な忖度を続けた結果、急逝したり、認知症を発症したり
想定外の事故や疾病で意識不明の状態が続いたらどうなるか?
過去に入院するほどの事故や急病の経験がある親であれば
万が一の場合の苦労を避けるためと子供から堂々と話せば
変な邪推もしないことでしょう。
当然ですが、親から子へ、子から親へのアプローチは
一方通行である必要はありません。
どちらからのきっかけでもいいので、
その後は会話のキャッチボールが出来れば
それが一番スムースな情報の共有や問題の把握に繋がるのです。
【むすび】後回しはお互いが損?
親子で、面と向かって終活ありきの会話を始める。
どちらにしても最初から構えた形での会話では弾まないのは
言うまでもないことでしょう。
と言って、次の機会に、まだ時期尚早だし、と言い訳を繰り返し
相手からのアプローチに期待するばかりでは何の解決にもなりません。
言い方が厳しいですが、一番この手の話を避けるのは
「心身ともに健康で元気いっぱいな親」の側です。
子供にしてもこんなに元気な親に終活を切り出すなんて
あえて逆鱗に触れるようなものと考えて当然ですし、
親としても、終活の必要性は十分認識していても、
今の自分には「無縁な心配事」と捉えがちです。
何度もこの場で言ってきたことですが
元気だからこそスムースな会話や決め事が出来るのです!
寝たきりになって気力を喪えば
複雑な考え事を厭うようになりがちです。
そんな自分に終活終活と話を持ち掛ける子供は
それこそ目障りな存在となってしまいます。
後回しにしていいことは何もない、
この一点だけで親子で終活を話題にすることが
いかに重要なことかが理解出来ると思います。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
■フェイスブックページ「50歳からの人生設計相談室」
■ブログ「新・先憂後楽」
■コラム「マイベストプロ東京」
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