【はじめに】おひとり様の終活は何が違う?
いきなりの本題です。
おひとり様にとって終活とはどういう意味を持つものでしょ?
例えば家族がいる場合や親族が健在な場合、
あるいは事業承継を迫られるような仕事に就いている場合ならば
遺される側に立っていろいろな準備をしなくてはと思います。
遺言の作成、遺産相続の内訳、葬儀や墓の要望、
業務上の関係者への挨拶、事業承継についての想い等々。
ですが、家庭を持たず、親族もいないおひとり様、
個人事業者で事業の引継ぎ相手もいないおひとり様は
誰に向けて終活をすればいいのでしょう?
今回は、おひとり様と終活についての記事です。
入院や入所する場合
仮に今は心身ともに異常はないとした場合でも、
想定外の交通事故や天災に遭遇する可能性はあります。
さらに予兆のない急病発症で自宅以外で意識を失ったら?
何となく認知症の兆候を感じたら、さらに診断が下されたら?
いきなり健康体から一変した場合、
おひとり様はどう対処したらいいのでしょうか?
既に治療や介護を受けている場合ならば、
その後の推移によっては入院や入所が必要となる場合があります。
その際の受け入れ先の調査、あった場合の諸手続きを自分でするのです。
自宅からの通院・通所の場合ならともかく、外出がままならない場合、
入院・入所後に発生する各種の費用の支払い手続きや日用品の購入など、
おカネを安心して委ねられるような人が、貴方にはいますか?
身元保証人の問題も入院や入所時には避けられない課題です。
他にも手術、延命治療の是非、術後の転院先を探すといった問題も
おひとり様だけではなかなかクリア出来ない難問ではないでしょうか?
終末期の対処
入院先、入所先との今後の考えを開示して共有する必要が出てきます。
自宅療養であれば、「看取り」をどうするかもおひとり様には重い課題です。
死後の課題
最後に行く衝く先はこの課題となります。
遺体の引き取り手と引き取り先は?
生前に入院先等と確認しておく必要があります。
親族や友人知人への連絡は誰が?
連絡先のリストアップは本人以外では出来ません。
次に葬儀を行う場合の課題です。
まずは葬儀自体をやるかやらないかを決めなくてはいけません。
では葬儀を行う場合は誰が喪主になるのでしょう?
火葬後の遺骨の取り扱いも決めておくべき課題です。
最近では0葬や直葬といった新しい葬儀の形も一般化してきました。
お墓を用意していなければ遺骨をどう扱うかも課題の一つです。
死後にはいろいろな手続きや届け出が発生します。
それらの作業は誰が行うのでしょうか?
自宅や施設内の遺品整理、所有財産の処分もあります。
遺言を作成したら、遺言執行は誰に託しますか?
遺産相続も相続人がいない訳ですから財産分与の方法も
事前に間違いの内容に考えておかなくてはいけません。
体調を崩し、入院し、その最期を看取り、死後の事務を全うする。
家族がいた場合であっても、なかなか決めきれない課題です。
これがおひとり様の場合は、
より生前に想いを形にしておく必要があるのです。
おひとり様の終活:具体的事例
ここでは、前項で紹介した内容をさらに具体的に掘り下げてみました。
日常の生活にかかわること
1)自宅で看護や介護の場合、自分に適したサービスを選択する
2)介護の場合、介護認定の申請を行う
3)ケアプラン作成の際の立ち合いや協議に参加する
4)施設入所時に必要な住所変更手続きや公共料金の引落し停止手続き等
5)自宅の場合、受診時や買い物時の付き添い
6)親族や友人知人への連絡代行
7)福祉施設の事前の見学
8)契約時の立会い
9)認知症に備えて成年後見の検討(任意で契約か、法定後見に託すか)
入院時に必要なこと
1)身元保証人の確保
2)入院時の付き添い(必要な場合)
3)入院時やその後の各種手続き
4)手術時の立ち合いや同意
5)退院時の付き添い
6)病院スタッフとの相談や協議
7)外出時の付き添い
8)日用品の購入代行
介護サービス時に必要なこと
1)身元保証人
2)施設入所時の契約手続きやその代行
3)入居に伴う住所変更や公共料金の引落し停止手続き等
4)ケアプラン作成の立ち合い
5)病院への通院や外出時の同行
6)福祉関係者との協議
全ての場合に共通すること
24時間連絡が取れる相手先の確保
公正証書の作成~遺言書、死後事務委任契約、任意後見契約
死後の手続きに必要なこと
1)死亡届の提出
2)年金の受給停止
3)保険証返還
4)公共料金(電気・ガス・水道等)の解約手続き
5)携帯電話、インターネットなどの契約解除
6)家賃や入院費、入所費、医療費、福祉施設利用費等の清算
7)親族や友人知人への死亡連絡
8)法要(「通夜、葬儀など)の執行
9)遺品整理~処分や引き取りを含め
10)納骨先の決定~永代供養墓、合葬、樹木葬、散骨など
11)遺産相続の手続き~相続内容の決定、遺言書の作成、遺言の執行
【むすび】おひとり様の終活の意味
以上、具体的に考えるべき課題を紹介しましたが、
死後の事務手続き関係を除けば、おひとり様が自分で考えて行動しなくては
何も事態は進展しないものばかりです。
いざその場に直面してから相談相手を探せますか?
自身で行動が困難になったら、じっくり依頼できる人物を吟味することも
難しくなるでしょう。
おひとり様にとっての終活とは「自分自身の為」であり、
「生きている間に必要となる課題をクリアするための行動」
「生活に影響する何かがあったときに備えるべき最低限の事前準備」
と言えます。
一般的意味での終活は、冒頭でも書いたように遺される側の為、
といった意味合いに重点が置かれているのではと私は考えます。
これに比べておひとり様には、この意味合いはさほど重要ではなく
最後の日を迎える迄に考えられる課題を事前にクリアすることで、
遺された貴重な時間を自分自身の為に有効活用する為のもの。
いわば、
自分の生活の向上の為の行動が、おひとり様の終活
こう考えれば躊躇なく行動に移せるのではないでしょうか?
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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■ブログ「新・先憂後楽」
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