認知症高齢者の資産凍結問題

【はじめに】

 連休明けの最初のブログはまたまた後見制度に関する内容です。

 認知症発症の高齢者に関する問題は
これまでも数多く採り上げられてきましたが
ここに来てまた話題になってきています。

 今回は改めて後見制度についてまとめてみました。

 

【認知症高齢者と保有資産】

 5月4日の日経新聞朝刊の記事によりますと
三井住友信託銀行の試算では2020年時点で認知症を発症している
高齢者の保有資産残高は187兆円、これが2030年には242兆円に達するとあり、
ここに軽度認知障害(MCI)の高齢者を含めると
一気に533兆円!に達するとありました。

 にわかには信じ難い数字ですが
その内訳は金融資産で349兆円、不動産資産で184兆円だそうです。
これだけの試算が場合によっては「凍結資産」となり
家族の生活に影響を与えるだけでなく、経済活動にも波及するリスクが
高まっているという意味も含まれることになるのです。

 また政府の「高齢社会白書」によりますと
2030年には認知症患者は約523万人に達し、
これは2025年時点の推計比11%増となる見通しだそうで
こちらの数字も信じ難いものでしたが、
今後も認知症高齢者は減ることはなく増え続けるようで
資産凍結のリスクも比例して高まると言えます。

 

【拡がらない制度利用の実態】

 ですが、
成年後見制度の利用者は2025年時点で約26万人に過ぎず
利用率は5%を下回るというのが実態となっています。

 さらに、この利用者の内訳をみると
最も判断力が低下した際の「後見」が圧倒的に高い比率で
任意後見の比率は「保佐」「補助」を大きく下回っています。

 任意後見の登記(登録)数は約12万件で
実際の利用者の数はさらに下回ることになります。

 要はもうどうにもならない最終段階にならないと
後見制度の利用に踏み切れないのが今の実態のようです。

 確実に判断力の低下と診断を受けてからでは
自分だけで資産の管理が出来なくなるのです。

 ですが最大のネックは
自身に判断力が十分にあるうちに後見を考える。

 この決断が出来ない、または先延ばしにする点にあります。

 法定後見の中で最も判断力の衰えが軽い分類の「補助」も
利用率では1割以下で、現状何の問題も無い場合に結ぶ
「任意後見」はさらにそれを下回るのも根底には同じ考えがあるようで
「まだ自分は大丈夫だ」という自負に加え
「他人に自分の大切な資産を管理させるなんて」といった警戒感を
拭いきれないせいだと思われます。

 残念ながら親族でも専門職の後見人でも
被後見人の資産の私的流用や横領といった
まさに当人が懸念している行為が後を絶たないことも
第三者に自分の生活(人生)を託すことへの抵抗感の主因ではあります。

 また記事の中では後見制度=法定後見と言うイメージが強く
任意後見の存在そのものを知らない人が多いのではともありました。

 要は、「発症してからしか後見(法定後見)と言う支援は受けられない」
といった思い違いもあって制度の活用が進まないのではないでしょうか?

 

【任意後見の利用実態の比較】

 では、法定後見とは異なり、
少なくとも自分の意思で後見人の選任が出来る
任意後見の実態はどうでしょうか?

 記事の中には海外との比較も掲載されており
任意後見の登録件数の比較では
 日本は約12万人(2019年時)
 ドイツが約648万人(2024年時)
 英国が約934万人(2025年時) となってます。

 調査時期に若干のずれはありますが
ここに3か国の人口を比較しますと
以下のようになります。

 日本は約1億2千万人
 ドイツが約8400万人
 英国が約6800万人 となっています。

 見事なまでに人口と利用率が反比例していますね。

 見方を変えれば、
ドイツや英国と言った国では自分の身は自分で守る
という意識が高く、自らの意思で任意後見を選択するのに対し
我が国は何かあればお上に縋る? 国や自治体に依存といった
国民性から自己責任で、自己判断で制度を利用するといった
意識が未だに低いのではと私は思います。

 少なくとも任意後見の場合は自分の想いに加え
親族等の意見や意向を聞き出して候補者を吟味することは可能です。
徹底的に検討をした結果の選任であれば納得は出来そうなのですが、
それでもこの利用率と言うことは
「後見人に対して拭いきれない一抹の不安」に加えて
「この制度自体を知らない、認識不足」の面も
あるのではないかと私は考えます。

 

【終わりに】

 以前のブログでも紹介しましたが
従来の後見制度では一度後見人が就きますと
途中で交代を求めることが難しく、制度の利用についても
当人が死亡するまで後見を止めることが出来ず
当然毎月報酬が発生する為出費が長期化する等、
当人に加えて家族にも負担が生じる点がネックになっているようで
任意後見の場合も現状では後見人の監督人を選任する等、
手続き上の煩雑さもあってなかなか利用に踏み切れないと言われています。

 何度も書いてきましたが
自分の意思が発揮出来るうちに
自分の想いを最大限尊重されるように
任意後見制度について積極的に調べることは
本人にも家族にも決して損でも無駄でもないことです。

 外出したのに目的地を忘れた
 同じ本(食料等)を2度3度と買ってしまった
 鍵を持たずに家を出た、車庫に向かった
 眼鏡や時計等の置き場所を失念してしまった
 家族や友人との約束を完全に失念していた
 会社への通勤ルートを間違えた、忘れた

 1度だけならど忘れや気の緩みと笑って済ませられますが
繰り返し上記のような「ポカ」をしていたならば
まずは専門医による診察を受けることを強くお勧めします。

 さらには判断力が正常な時期に
相続に関する個人情報の取りまとめを済ませておく事も
家族にとっても本人にとっても後々の備えとなるのです。

 改めて「先憂後楽」の行動を起こすことを意識して下さい。
明日考えよう、まだ先の話だと問題を先送りすることは
結果として貴方自身の将来を大きく左右してしまうのです!

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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