はじめに
先日の日経新聞の特集記事に
葬儀関連の情報サイトを運営している「鎌倉新書」の調査で
お墓の実態調査が掲載されていました。
これによりますと、
2023年の調査でお墓を購入した方の割合で
初めて樹木葬が過半数を超えたそうです。
墓石のある墓=一般墓は20%を切っており
都市型霊園に代表される納骨堂が20%超え、
その他合葬や手元供養が約9%となっていました。
お墓と言えば、田舎のお寺の境内にあるもの。
墓地の中に我が家の墓石があるのがお墓。
こういった概念は今や通用しなくなっているようです。
今回は、現在のお墓事情について紹介したいと思います。
6つに分類されるお墓について
1)一般墓
前項でも触れましたが基本的には寺が管理するもので
その寺の檀家になること、墓地と墓石があることが特徴で
普通は〇〇家代々の墓となり、先祖代々を弔うものです。
最近多いのが少子化、核家族化によって
祭祀承継者が絶えてしまい無縁墓と化すケースです。
2)納骨堂
都市型霊園が手掛けているケースが多いようです。
100体以上の遺骨をコインロッカー形式に安置するもので
商業ビル並みの建物の納骨堂も存在しています。
比較的都心の鉄道駅の至近にあり
アクセスの良さから気軽に墓参できる点が
大きなメリットと言えます。
他にも屋内に安置されている為
気候や天候に左右されず落ち着いて参拝出来る点も
屋外露天の一般墓にはないメリットと言えるでしょう。
3)永代供養墓・合葬
多くの人を一緒に祀る形式です。
自分の後を継ぐ親族がいないような場合、
菩提寺がその後を継ぐ形で遺骨を預かるものです。
4)個人墓・夫婦墓
最終的には合祀されるものが多く
子供のいない夫婦やおひとり様等
後を引き継がない墓と言うのが特徴です。
5)樹木葬墓
最近急伸している形式です。
個別の墓石はなく、多くは自然に中にある墓所(区画)に
樹木を植えその周囲に遺骨を埋葬するものです。
献花などは共通の施設にある献花台を使います。
6)手元供養
墓や納骨堂への収蔵をしない方式です。
焼骨後上記のような埋葬・収蔵をせずに
遺骨箱のまま自宅に安置したり
遺骨の一部を専用容器に入れて仏壇に安置したり
身につけるペンダント等に遺骨や遺灰を入れて
安置する方式もこれに含まれます。
墓埋法と言う法律によって
一度墓地に埋葬、納骨堂に収蔵された遺骨は手元供養が出来ません。
また今の墓から新しい墓や納骨堂等に遺骨を移す場合(改葬)も
先に新墓を確保することが前提となりますし、
さらに現在の遺骨を管理している責任者の承認を得なければ
遺骨を移すことは出来ません。
6)の手元供養を選択した場合は、
埋葬も収蔵もしていない為、何十年後であっても
一般墓や納骨堂へ改めて移すことは可能です。
また樹木葬墓や永代供養墓の場合は
一度納めた後に改葬をしたくとも出来ない点も注意が必要です。
変わるお墓という形態
個人的な感想ですが、
都市型の納骨堂が伸長していたのは実感がありました。
私自身が都市型納骨堂を契約した理由の一つは
やはり墓参の際の交通の便の良さ、アクセスの利便性でした。
他にも墓参後にも魅力ある立ち寄り先が周辺に集中しており、
そういうことから墓参に足を運びやすくしていました。
さらに室内での墓参となりますから
荒天の際はタクシーや自家用車を利用することで
納骨堂に辿り着けさえすれば、後は天候を気にせずに
落ち着いたお参りが出来ます。
生臭い話になりますが、
初期費用がで地や墓石を必要としない分だけ
100万円以上の格差が生じます。
この点だけで、
納骨堂選択が増えたと言ってもおかしくはありません。
しかしながら、
調査結果では樹木葬墓がトップでした!
費用面で言えば、
先の納骨堂よりも安いのが一般的で
加えて祭祀承継者がいないというケースの増大も
樹木葬墓への関心が高まったのではないでしょうか?
以前の話ですが、
家族がいるケースで費用面やアクセスの良さから
当事者になる高齢の親は樹木葬を強く考えたものの
子供の方が墓参りできない埋葬は納得できない、
自分の代はまだしも子供たち(当事者の孫)にとって
お参りする墓の無いことは後になって悔やむのではと
反対を表明されたケースがありました。
ですが最近のおひとり様の増加、
少子化、核家族化による家族関係の希薄化も加わって
上記のような心配をしないケースが増えたこともあって
ある意味当事者が「気軽に」この墓を選択するようになった。
といった見方も出来るのではと思っています。
昭和の時代までは、
少なくとも当たり前と言えた一般墓からの離脱の理由。
最も多かったのは
「遺された家族への負担を軽減しておきたい。」
という当事者本人の意向でした。
この負担の中には
もはや何の縁も繋がりも無くなった郷里の墓への墓参自体が
時間と費用の負担を子や孫に強いてしまうという点も含まれるようで
あくまでも高齢になった親世代の考えが主流のようです。
さらにそれに加えて少子化の影響からでしょう、
墓の承継が困難になったという理由が増えてきました。
子のいない夫婦、生涯おひとり様に加えて
親族はいるものの海外在住といったケースや
回復不能な諍いの結果、関係絶縁と言うケースで
事実上承継者は皆無として、墓じまいに積極的になったのでしょう。
こういう風潮は寺も重要視はしているようで
まだ一部ではありますが、ペットと同じ墓に入れるといった
ユーザー目線の方式を採り入れる寺も出てきたようですし、
最近はかなり普及したようですが、各種料金の明朗化もあります。
これまで「お気持ちで結構」でうやむやなままだった料金体系を
明記することで安心と信用を得ることになった寺も多くあります。
よく言われることに日本人は子が生まれると
神社に詣でて、結婚はキリスト教の教会で挙げて
死んだ時には菩提寺で葬儀をすることに何の疑問も抵抗もなく
当たり前のようにして過ごしてきました。
冠婚葬祭に費用の目安は無し、高値安定での自由競争、
大胆に言えばこれがまかり通っていた訳ですが
ここに来て大きな変化が生じてきたのです。
家の為でもなく、世間体でも、見栄でもなく
当事者やその家族が納得したことがスンナリ実行に移せる。
変化に直面する関係者は大変でしょうけど
故人を敬う、偲ぶ、想うという気持ちは変わらないはずです。
その気持ちをどう受け止めるかで時代の変化も吸収できると私は考えます。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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