【はじめに】
今日は健康に関しての終活、を考えてみました。
終活と言いながら事前の健康管理の大切さを紹介するものです。
特にがん検診や人間ドックなどの本格的なでなくとも
もっと身近で、本人しか自覚出来ないものの問題を紹介します。
【聴覚の問題】
外見から分かる様な疾病やけがでないもののひとつに
耳の疾病による聴覚障害があります。
重度の中耳炎などの場合もあれば
突発性難聴など原因不明のものも含めて
聴覚に支障が出ると一気にコミュニケーション能力は減衰します。
1)コロナ陽性で緊急入院
最初の例はまだ50代半ばの現役会社員の方です。
単身赴任先でたまたま検査を受けた結果がコロナ陽性!
まだコロナ禍全盛の頃だったこともあって即隔離入院。
まさに着の身着のままでの入院生活を強いられました。
実はこの方、慢性中耳炎を患っており、
当時は仕事にかこつけて治療を先延ばしにしてきたのです。
それが急変した生活環境の影響を受けたのでしょうか
一気に悪化し、ほぼ聞き取りが出来なくなったのです。
運の悪いことに片方の耳が元々難聴で健常な耳での症状悪化で
ほぼ両耳の聴覚がゼロに等しい状況に陥りました。
携帯電話は常に身に付けていましたが、
こうなっては無用の長物でしかありません。
メール機能も「会話すればメールより早く済む」という考えで
家族間の携帯のメアドすら確認していなかったのです。
この為、遠隔地に暮らす家族にも直接連絡することが出来ず
筆談で病院スタッフにお願いして自宅から必要な品を
回収して病院へ持って来てもらうにもかなり苦労したそうです。
2)旅先で緊急搬送
この方は元来耳が悪く補聴器が手放せない状態でした。
両耳に装着して何とか会話が出来るというレベルです。
80代の高齢でしたが、毎年墓参りで郷里に帰省しており
この時もいつも通りに帰省して墓参をしたのですが、
墓地の出口で転倒し、腰椎骨折で最寄りの病院へ搬送されたのです。
もともと一泊の予定での帰省で所持品も最小限、
さらにおひとり様でしたので自宅から必要な品を持って来てくれる
家族はなく、近所ともさほど交流していなかった為自宅のカギを
預けての旅行でもなかったのです。
そして補聴器も装着した本体しか持って来ておらず、
入院して3日目に電池切れとなったのです。
自宅であれば予備の補聴器や電池のストックがあり、
クリーニングキットなどの付属品もすぐ手に入ったのですが…
この方も携帯電話は持っていたものの
この状態では全く役に立ちませんでした。
メールの操作も不慣れでしたし、まずメールする相手がいませんでした。
気の毒にこの方は2か月の長期入院となり、
その間の慣れない住環境、筆談でしか意思が伝えられない環境に
日々ストレスをため込んで粗暴なふるまいを始めたようです。
症状が安定し、移送が可能になったとたんに
病院からは追い立てられるように退院を強いられたそうです。
先に紹介した50代の方も
上手くやり取りが出来ないことは相当なストレスだったようです。
急いで用件を書くと家族からは字が汚くて読めないと突っ返される
ゆっくり書くとこっちがもどかしさからイライラしてくる。
家族の方も同じで、勝手の分からない単身赴任の部屋から
頼まれたものを探すにも筆談では要領を得ず双方の勘違いのまま
頼まれた品を発見できない、持ってきたらものが違った等で
二度手間三度手間となり、かなりイラついていたようです。
他人とのコミュニケーションという点から
聴覚は最重要な感覚です。
ですが一般的には外見からは聴覚障害の有無は
親しい中であれば別ですが、分からないのが普通です。
結局対応出来るのは自分自身での備えでしかないのです。
【歯の問題】
残念ながら高齢者の殆どは
歯に何らかの問題を抱えています。
これは多くの介護施設で聞く話でもあります。
歯周病や歯槽膿漏と言った疾病に加えて
長期入院で体調に変化が生じるのでしょうか、
入れ歯のフィッティングに違和感を感じ始めて
その結果体調不良になるケースがあるとのことでした。
これも先の耳のケースと同じで
第三者の素人が外から判別出来るものではありません。
ただ歯の具合が悪い、かみ合わせがおかしくなると
食生活に大きな影響を与えます。
今まで普通に咀嚼できたものが、好きだった噛み応えのある品が
うまく食べられず、結果として柔らかな流動食的なモノしか受け付けない。
特に高齢者の場合、
するめや固焼きせんべいといった品を好む傾向が強く
これが食べられないことにまずショックを受けるそうです。
その他にも肉にかぶりつく、リンゴを丸かじりするといった行為も
難しくなれば入院時の大きな楽しみの一つであるはずの食事が
逆にストレスの原因となることもあるそうです。
一部の例ではありますが、
「ついに満足に食事も出来なくなってしまった」ことで
気力を失い、鬱状態から認知症に進んでしまったケースも
あったとのことでした。
ただ、私が話を聞いた範囲では、
心身健全な時に歯の健康にもう少し留意していれば、
または早期に治療を始めていればこういった事態を招かなかった。
というケースが意外に多いとのことでした。
このケースで多くの方に共通するのが
「医者・病院嫌い」で治療を後回しにする傾向があったのです。
私の知り合いの方も虫歯と歯周病などで
最悪インプラントをせざるを得ないまで悪化させていたものの
「もう長くは生きないから今更高い金払って治療なんてもったいない」
「何とか騙し騙しで行くところまで行ってみようか?」
等と言って根本的な治療を避けてきたのです。
まだ70才になったばかりでまだまだ先は長いと思うのですが…
そうしたら足腰の不具合で施設に入所することになったのです。
以来既に10年、入所当初から固形物の食事は負担が大きいという医師の判断で
3度3度流動食の生活となりました。
頭は正常ですし、内臓も年相応に良好な状態らしいのですが、
肝心の咀嚼能力がないことで最大の楽しみの一つである食事に
大きな制約を課せられたのです。
「こんなことなら治療しておくべきだった。」
全く後悔先に立たずの典型でした。
また入れ歯を装用している方でも
先に書いたように痩せたことでの不具合や
病状によっては入れ歯の装用を制限することもあるようです。
こうなると食事以外にも、会話に支障が出てきます。
空気が漏れるせいなのか単語が不明瞭になり、語尾もあやふやになります。
先の耳のケースと同様に場合によっては筆談でのやりとりを強いられるのです。
【終わりに】
今回は耳と歯、2つを採り上げてみました。
メガネも必需品ですが、入れ歯や耳と比べ
まだ暫定的な対応が取りやすいと思いますので
ここでは省きました。
多くの場合、
耳や歯の症状以外に健康に問題がない方ほど
治療や日々の管理には前向きではないようです。
いつでも行ける。
自分で何とでも出来る。
自分が我慢すればいいだけ。
その結果、緊急事態に直面すると手遅れになります。
他人との交流が出来ない(聞こえない、話せない)。
3度の食事が楽しめない。
特にシニア世代になれば趣味以外で社会との接点を保つものには
この2つはかかせないものではないでしょうか?
もし、今現在ここに書いたような疾病をお持ちの方は
是非とも早期の診察や治療の開始を検討して下さい。
高齢になればなるほど、治療にも時間がかかりますし、
回復までの時間も長引きます。
補聴器の問題はやはり常に電池やクリーニングキット等を
所持する習慣をつけておく事や器具の販売店にも郵送での
購入の可否や代理人での購入の可否などを確認しておきましょう。
ケースによっては介護タクシー(自己負担あり)を利用しての
購入という手段も考えられますので入所施設への確認も必要です。
歯の問題は発症させないことが大前提で
定期的な歯の検診は受けることで未然に防げることが多いはずです。
また介護施設によっては近隣の歯科医と提携して
月に何度かの往診治療を行う契約を結んでいるケースがあるので、
これから施設を選ぶ際には一つの目安としてもいいのではないでしょうか?
耳と歯、
共に他人とのコミュニケーションには必須の器官です。
自分の意思が伝わらないもどかしさや、相手の言葉が聴き取れない不甲斐なさ
どちらも精神面の健康にいいはずがありません。
シビアな言い方になりますが
自分の行動如何でこの問題はある程度避けられるはずです。
何度でも言いますがこの手の持病をお持ちの方は
健康体であるうちにしっかり考えて欲しいのです。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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