連休前と連休後の相談事について

コロナ禍の終息を受けての変化

 ほぼ4年にわたるコロナ禍で
すっかり忘れていた日常が戻ってきました。

 このGWも、
数年ぶりに実家に帰省した、
郷里の代々の墓参りが出来た、
久しく出来なかった高校大学のOB会が開催された、
仲間同士での旅行が出来た…

 など等、4年前には当たり前だった
大型連休の日常を満喫した方が多く見受けられました。

 当事務所にも
この行動の変化に伴っていろいろ相談を持ち込まれています。

 今日はその中から
実家への帰省前後に目立った案件について
紹介していきたいと思います。

 

 

帰省前の相談の件

 まず、この連休前に目立ったのが、
「数年ぶりに実家に帰省するので実家の墓を何とかしたい。
墓じまいや改葬を前提に何を調べておけばいいでしょうか?
持参するものがあればそれも教えて欲しいのですが?」

 概ねこういった問合せでした。

 この4年間動くに動けなかった方々が
漸く懸案事項の解決に向けて具体的な行動を起こし始めました。

 全ての案件をここで紹介は出来ませんので
お墓問題、それも改葬手続きの場合に絞り。
私の経験上からのアドバイスとして以下の点を伝えました。

菩提寺の名前と宗派

 冗談ではなく、
意外に寺の名称をうろ覚えというケースは少なくないのです。
名前が分からなくとも場所だけは覚えてますから、という場合も
住所やアクセスを他人に正確に伝えられるほど覚えているケースも
残念ながらごく一部に留まっていました。

 それ以上に驚かされたのが、
宗派を知らないまま数十年というケースでした。
 
 さらに知らないどころか
完全に間違った宗派で認識していたという
「罰当たり?」なケースもあったのです。

 かかなくてもいい恥をかかないように
念のための確認は欠かさないようにしたいものです。

 

墓の立地

 例えばお墓が通路に面しているか?
人一人が歩ける程度の幅しかない砂利道でしか
辿りつけないような奥まった場所にあるのかどうか?

 墓の立地場所によっていろいろと問題が発生します。

 仮に通路に面していた場合であっても、
その通路は自動車も余裕で入り込める幅があるのか?
さらに長時間の停車が可能な場所かどうか?

 奥まった場所にある場合、
人力でしか作業が出来ないようなスペースか、
軽装備の機材なら搬入・使用が可能なスペースなのか?

 これらが事前に把握出来ていれば、
墓石の撤去時にどういう手順で進められるかが判ります。

 より正確には墓の場所が山を切り開いた斜面にある場合や
両隣と密着しているような場合等も事前に知っていれば
それなりの機材の用意がスムースに可能になります。

 使用可能な機材の種類や作業に必要な人出によって
作業に要する費用は大きく変わります。

 

 もう一つ、気を付けなくてはいけない点として、
特に地域によっては同姓が非常に多く暮らしている場合があります。
私の改葬案件で経験した中では、山の斜面にある墓の一角、
8基の墓石が全て同じ名字で「〇〇家代々の墓」
といったケースがありました。

 相談者自身が墓の立地をよく覚えておらず、
戒名もうろ覚えでしたので写真を撮りまくり
その場で送信し、先方からの返答待ちとなりました。

 いきなり現場に出向いて呆然としない為にも、
事前に判る範囲で、立地場所の把握をすることです。

 

墓のサイズ

 立地に加えて、墓石の大きさによっても
撤去時の人数や機材の見積もりが異なります。
墓参時にメジャー等で正確な寸法を確認しておきたいものです。

 最近は画像を撮影したものを提出するケースがありますが、
比較対象が不明確ですとサイズの確認は不正確なものになります。

 画像データも大切ですが、寸法の計測はより重要です。

 ちなみに、
あくまでも私の経験上の話ですが、
相談者の記憶に頼った推定サイズはほぼ確実にでたらめでした。
誤差1m以上というケースもあったほどです。

 

墓の全景写真

 先に触れましたが、墓石の画像を用意するケースでも
墓石だけの画像データではやはりデータ不足です。

 墓石以外にも必要なデータはあるのです。

 例えば敷地内に敷石があるかどうか?
本来の墓石以外に脇や後ろに別の墓がないかどうか?
敷地内の樹木はもともとのものか、後から植樹したものか?

 これらを事前に把握しておきませんと
墓石撤去の際、別途作業が必要になるかどうかに関係してくるのです。

 さらに要注意なのは、
田舎の本家筋の墓ほど敷地内に分家の墓もある場合があります。

 その墓の処置は当日で判断できるものではないので、
分家の管理責任者との間での事前確認は必須です。

 勝手な判断ですべて撤去とした後に
親戚筋から非難され、深刻な騒動と化す。

 こうならない為にも、事前の確認が重要なのです。

 

お墓の中身の確認

 要は何人分が埋蔵(納骨)されているかの確認です。

 相談者の記憶では祖父母と両親だけであっても
実際には代々の骨壺も安置されていることも少なくありません。

 納骨に立ち会った場合であっても
わざわざ納骨の前に奥まで覗き込んで
骨壺の数を確認しようという方はいないでしょう。

 更に地方によっては
骨壺を用いずに直接地面に遺骨を撒く方式があり、
時間の経過によって全て土に還っており、
全く区別がつかないこともありました。

 完全とは言えませんが、
出来る限り住職や事情を知る親族等から
事前に情報を収集するようにしましょう。

 用意してきた骨壺の数以上の遺骨が出てきたら?
当日にこの状態では目も当てられませんね。
 
 今回のように事前に墓参の機会を得た場合には
出来れば住職に話をして、墓を開けて遺骨の数の確認まで
進めておけば、用意する骨壺の数で悩むこともありません。

 

改葬・墓じまいの意思表示

 お墓自体に関係する事前チェックは以上ですが、
仮に真剣に改葬や墓じまいを考えているのであれば、
墓参の際に菩提寺の住職にはその思いを伝えておきたいものです。

 そこで相手が態度豹変するか、穏やかに対応するかで
実際の改葬許可の手続きの際の心構えが変わってきます。

 離壇料の交渉など、生臭い話を持ち出してくるか?
先祖代々との付き合いや繋がりを持ち出して翻意を促してくるか?
なかには、泣き落とし気味に寺の存続の危機を訴えてくるケースもありました。

 相手がどういう考えを持っているかを知っておくことは
改葬以外の交渉の場でも必要不可欠な要素です。

 一種のビジネスの交渉事と考えて臨むことが求められます。

 

帰省後の相談の件

 さて、
前項で書いたように連休前の時点では
帰省の際に確認すべき情報に関しての
駆け込み相談が集中しました。

 連休明けにはそのうちの何組かからは
墓地の確認や墓石の調査等の出来不出来の中間報告が入りましたが
それ以上に今度は連休中に久々に見る田舎の墓や
空き家になったままの実家の現状(惨状)を見て
このままではいかん!と態度を一変させ危機感を募らせた方からの
相談依頼が続いてます。

 あんな状態とは知らなかった
 あれをこのまま相続すると思うとゾッとした
 ようやく代々の墓の場所が分かったが二度と足を運びたくない

など等、現実を目の当たりにして
慌ててて善後策の相談にというのが多くの方の共通した動機でした。

 残念ながらこのケースの場合、
事前に問題意識を持っていませんので
既述したようなチェックはしないままに帰京しています。

 こういうケースの場合は、
二度手間ですが、正確な情報収集のために
実家や墓への再訪を促すこととして、
前項で紹介した確認事項をお伝えしています。

 説明を聞いた結果、
全てコチラにお任せしたいという方もいらっしゃいますが、
その場合の交通費等の実費から業務報酬の目安をお伝えしますと、
考え込んでしまいます。

 遠隔地、過疎地であれば現地への往復の交通費だけでなく
エリア内での移動手段もほぼタクシーのみというケースも多く
さらに宿泊や菩提寺への挨拶の際の手土産などを考慮すれば
決して安くはない費用が生じます。

 費用をかけても時間と手間を省きたいか?
 費用を抑えるためにも全て自分たちで片付けるか?

 個々の事情がありますからどちらがいいとは言いません。
ただ少なくとも、この時点で現実を直視出来たこと、
問題の発生前に現状を把握出来たことはラッキーなことなのです。

 

 

むすび

 コロナの規制解禁によって
郷里の両親や兄弟と数年ぶりに対面での会話が出来た。
これまで放置してきた空き家になった実家の問題や
老親との相続や財産分与の話し合いが始められた。
兄弟間での話し合いや打ち合わせも可能になった。

 その結果浮上してきたいろいろな問題をどう処理すべきか?
お墓の問題以外にも多様な相談が持ち込まれてきます。

 新聞テレビで伝えられる「街に日常が戻ってきました」
というアナウンスもここにきて当事務所にも当てはまるようになり、
約4年ぶりに毎日相談予約が入るという「盛況」となりました。

(ただ、なぜか相談者の方が皆さんサラリーマンなので
先週来相談開始時間が19時以降という完全夜型営業になってます!)

 

 まだまだ完全な復活とは言えませんが、
終活を始めとした各種相談によって多くの方がリスク回避が叶うよう
業務に邁進したいと思います!

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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