入院・入所後のスマホの取扱いは?

【はじめに】 

 ここ最近、いろいろと高齢者の施設への入所のお手伝いで
老人ホームを始め各種介護施設や病院に出向くことが続きました。

 その際に施設側からも入院・入所する側からも
話題(問題として)に出てきたのがスマホの取扱いでした。

 高齢者に限らず、何らかの事情で一般社会から隔離された際に
スマホの使用に制限が加えられたらどういうことになるか?

 今日はこの点について紹介したいと思います。

 

【スマホ等情報通信機器の利用状況について】

 最初に、令和4年におけるスマホの保有状況ですが、
世帯保有率で90,1%、個人でも77,3%となっています。
固定電話については平成25年では約80%だったものが
令和4年では約64%と減少傾向が続いています。

 またスマホ以外の携帯電話についても
令和4年では19,0%と減少傾向が継続中です。

 世帯保有の割合をまとめてみます。
パソコン、タブレット端末、スマホの3つを比較しますと
パソコンは69,0%、タブレットが40,0%で
タブレット型は伸長はしているものの、スマホほどではなく
パソコンも令和に入ってからは70%前後で停滞してます。

 これに比べてスマホは
平成25年の約63%から令和4年では90%超えと
「ひとり勝ち」状態が続いています。

 インターネットの利用機器という面での比較でも
今度は個人の比較になりますが、令和4年では
スマホが71,2%で断然トップでした。
以下パソコンで48,5%、ネット接続型テレビが約27%
タブレット型は26,4%という結果でした。

 利用状況を年齢別に調べてみますと
13才から59才迄の年代は全て95%以上となっており
60~69才の我々が該当するシニア世代でも約87%
90%台突入も時間の問題でしょう。

 70~79才の世代でも65,5%と高率で
80才以上でも33,2%と3人に1人は利用している状況でした。

 では年代別・個人のインターネット利用機器は何か?
当然スマホがどの世代でもダントツのトップでした。
20代で88,9%、30代で90,7%、40代で89,0%
50代で86,7%、60代で73,7%、70代で46,9%
80代で17,3%がネットはスマホで利用しているという事でした。

 このように今や生活にビジネスに欠かせないアイテムである
スマホですが、これによって問題が生じるケースがあるのです。

 

 

【病院での話】

 まず高齢者が事故や病気で搬送されてきた場合の話ですが、
状態にもよりますが概ねベッドでの安静を長く強いられる場合、
2週間ほど経過すると「せん妄」という症状が発症するようです。
今までの当たり前の生活から慣れない場所で24時間寝たきり、
いつも人の目に見られている(晒されている)ことでパニック状態に
なり、その結果せん妄という状況に陥るとのことでした。

 この際に実際にあったこととのことでしたが、
スマホを携帯して入院した高齢者が長期の入院生活の中、
「自分は誰かによって拉致・監禁された」と思い込み、
病院スタッフの目の前で「110番」しようとしたそうです。

 警察でなくとも親族や友人に上記の理由から「SOS」を連絡して
事情を知らない親族や友人を翻弄させたことがあったそうです。

 病院の場合、いわゆる待合室やロビーなど公共の場には
今や街中でも珍しくなった公衆電話が設置されていることが多く
歩行可能な患者や見舞に来た家族等がこれを利用して外部との連絡を
取ることが可能なのですが、ここに挙げたようなベッドで安静の患者には
使用することは出来ません。

 おのずと、スマホで外部との連絡をと考えるのですが
先のような錯乱状態の際にはスマホがある事が大迷惑な事態を
生じさせる要因にもなることから基本的にはナースステーションなどに
一時保管したり、親族に持ち帰ってもらうそうです。

 これで一件落着と思ったのですが、
悪い方向に状況が進むと携帯を盗まれた、と考え始め
その後は財布がなくなった、中の現金を盗られている!
時計がない、あれがないこれがないと被害妄想に陥るそうです。

 こうなると病院との信頼関係は最悪になり、
暴言が日常的になったり、食事のトレイをちゃぶ台返ししたり
親族に「自主」退院を求める結果になることもあるということでした。

 

【介護施設での話】

 上記の病院の場合であればほぼ必ず「退院の時期」が来ます。
ですが、入院の結果、自宅暮らしが困難とされて介護施設に
入所となると、事実上そこが「終の棲家」になるケースが多くなります。

 この場合も各個室にスマホの持ち込みや保有に制約があるケースは
少なくありません。

 せん妄やそこからの認知症発症の場合は別として
足腰の支障での入所や脳疾患の後遺症などで入所した患者の場合は
いわゆる「わがままからのスマホの乱用」があったそうです。

 実際にあった事例としては
食事制限のある入所者が勝手にスマホからデリバリーを注文した。
部屋のサイズを確認しないまま家具やオーディオ機器を搬入しようとした。
ネットに接続して契約を締結したことで毎月健康食品が施設に届きだした。
 などといったケースで、その都度施設のスタッフが対応を強いられ
場合によっては代金を肩代わりさせられたこともあったようです。

 こういった経験があったからか、私が来訪した施設には
集会場や食堂にも公衆電話が設置されていませんでした。

 

 

【外部との連絡の問題】

 こうして見てきますと、
「入所者にスマホを持たせること」はお互いにメリットなし、
「入所者には個人の携帯保有と使用は禁止」
という見方になるのも仕方ないことと思います。

 ですが、入所者が何か重要なことを思い出し、
早急に家族や知人、または取引先に連絡をしたい!
こういうケースは必ず出てきます。

 この場合、手元にはスマホがなく、介護施設には
公衆電話もない、あるいはそこまで自分一人で出向けない。

 こうなると施設のスタッフに依頼して代わりに連絡を
取ってもらうしかありません、依頼の案件についても
なかには第三者には知られたくない事(暗証番号や預金残高等)
であれば、家族や友人の来訪までは何も事態が進展しません。

 終の棲家になる(予定の)介護施設であれば、
通常は施設が保管・管理し、必要な場合のみ
持ち主である入所者に使用を許可という方式が可能か?

 これも問い合わせをした全てで出来かねますとの回答でした。

 やはり管理責任を問われますし、
考えたくないことですが、スタッフの悪用も無いとは言い切れません。
保管中には放電しますから随時充電の手間が発生します。

 ひとくちに施設の管理といっても
実際にはけっこうな負荷を生じさせるようです。

 看護師などに口頭で家族に連絡を欲しいと伝えても
繁忙時等ではつい忘れてしまうことも無いとは言えず、
そうなると、不信感や不満の蓄積にも繋がってしまいます。

 近所に家族が暮らすのであれば
それなりのタイミングで顔を出して意思疎通を図れますが
遠方に暮らす場合にはそうもいきません。

 施設側も特効薬は今のところありません、
というのが実状のようでした。

 

 

【終わりに】

 さて、ここまで高齢者のケースを紹介してきましたが
入院に関しては年齢に関係なくスマホなしの入院生活を
強いられることはあり得ます。

 特におひとり様で出先で発病や事故に遭遇して
そのまま搬送、長期入院となれば状況は同じです。

 安静を強いられるような事故に遭った
 コロナ陽性で症状も発症した

 こうなれば自宅からスマホを持ち出すことも
スマホは保有していても予備のバッテリーや充電器がなければ
事実上スマホなし=外部連絡手段なしになるのは時間の問題です。

 以前のブログでは「補聴器や入れ歯」の問題を採り上げましたが
スマホに関しても同様かそれ以上に使用不能になった際の不具合は
避けられません。

 冒頭に書いたように全世代においてスマホなしの生活になれば
相当な不便やストレスの温床になるのは確実なことと言えるでしょう。

 と、ここまで書きながら、解決策は今のところ見出せていません。
無責任な話ですが、個々の対応策を施設側と話し合ってもらい
暫定的な措置を考えてもらう事をお薦めします。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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