貴方はどの「終活」から始めますか?

【はじめに】

 ひと口に終活と言っても内容はいろいろあるのはご存じと思います。
どうもまじめな方ほど一気に終活を始めようとあれもこれもと
手を拡げてしまい結局途中で挫折したり、重要度の低いものばかりに
集中してしまい、肝心な時には肝心なことは全く手つかずだった…
これでは、せっかくの行動があまり意味のないものになってしまいます。

 今日は私の主観でまとめた終活の10タイプ、以下に紹介していきます。

 

【親の終活】

 まずは自分の終活ではなく
「高齢の親に終活をしてもらう」という終活です。

 既に60代ともなれば自分自身も終活対象者ですが、
それ以上に考えるべきは老親の終活です。

 以下に元気なうちに終活に取り組んでもらうか?
無論、親自身に後悔や無念の思いをさせない為でもありますが、
自分たち子供世代への負担軽減という意味合いを
理解してもらい、自発的に行ってくれることも
大きな括りでの終活と言えるのではないでしょうか?

 特に90代でも心身健康で毎日外出したり
中には毎日ハンドルを握ってドライブを楽しむなど
アクティブな方も少なくありません。

 そしてこういう方ほどなかなか終活に手を付けません。
そしてある日突然、転倒や発病によって一気に終活が
喫緊の問題となってしまい、親子そろって振り回される…

 こうなってからでは(私が見聞した話では)
問題の解決に向けて情報の収集や今後の対応などを
後追いで処理することになり、時間の余裕もない中で
親子で片付けていくことになるのです。

 問題のカギは、親に終活を始めてもらう事であって
子どもからすれば「親の終活」をどう波風立てずに始めさせるか?
この点について今のうちから考えることです。

 「親に終活をしてもらう」のが「自分にも必ず関係してくる終活」
という考えを60代の子供世代は持って欲しいものです。

 

【自分の終活】

 次は当然ながら、自分自身のことになります。

 60代、定年退職を迎えたら
いくら自分はまだ若いと思い込んでいても
終活に向けた準備は始めるべきです。

 まずはここまでの自分の履歴の整理とまとめ、
こういった軽い気持ちで自身の情報整理を始めましょう。

 配偶者や子供が知っておくべき情報は何か?

 預貯金や有価証券、不動産と言った資産関係、
 取引のある金融機関や会員になっている各種契約、
 会社関係から社外の交友関係や学生時代からの友人など

 思いつくものからでいいので
その都度書き出しておいて後日整理するようにすれば
一気にやろうとして早々に挫折するよりはましです。

 この他にも自分の生涯の趣味で収集した品々の後始末
捨てるには忍びないのであれば、保有を継いでくれる同輩を
今のうちから探しておくことも大切なことです。

 見方を変えればこの行動、
遺言の下調べとも言えます。
いきなり本番の遺言書作成に直面するよりは
終活の一環として自身の情報を収集整理することで
いざ本番の際の負担や不安はかなり削減出来るはずです。

 親にしてもらいたい終活は
いずれは自分もやることになる終活です。

 親に話をする前に先に自分の終活を始めてみる。
その際に遭遇した失敗談や苦労話を親に話すことで
親があまり抵抗しないで準備を始めてくれたという事例は
少なくありません。

 親子共々、まずは自分の個人情報の整理を始める。
終活のスタートとしてはこれが一番入りやすいと思いました。

 

【仕事の終活】

 これは自営業の方が必ずぶち当たる問題です。
飲食や小売業で店舗で仕事をするケースでは
長い時間立ち仕事を強いられることが多く、
健康問題が店の存続に大きく関わってきます。

 いつまで現役でこの仕事を続けていくか?
 今の状態でいつまで仕事を続けられるか?

 身体が言うことを聞かなくなったイコール引退?
生活の為にはそう簡単に決められないのが自営業です。

 あとを継いでくれる子や親族等がいれば隠居して
悠々自適もあり得るかもしれません。

 ですが多くの場合は自分一代で終える仕事
という考えの方は少なくなく、幕引きのタイミングに
悩んでいるケースは多数見受けられました。

 今の仕事を辞めて、その後の生活を支える収入の当ては?
最大の問題はこの一点に絞られると言ってもいいでしょう。

 だからこそまだ心身健全なうちに「仕舞い方」を
考えておく事は重要な終活になると思います。

 

【家(不動産)の終活】

 これは空き家問題と言ってもいいでしょう。
時を経て空き家となって放置されたままの実家、
またはおひとり様が暮らす住まいの将来の空き家問題も
ある意味周囲に影響を及ぼす度合いで言えば最優先の課題かもしれません。

 いずれは郷里に戻って実家に暮らすのか?
またはリフォームして売り出す、貸し出すのか?
更地化して売り出すのか? 

 場合によっては
延々と支払いが続く固定資産税や
電気・ガス・水道代も基本料金だけとはいえ
空き家状態の期間が未定のままであるならば
バカにならない出費を続けることにもなります。

 さらに時間が経てば経つほど家の内外装の補修や
庭木の剪定などもせざるを得ないことにもなります。

 もしかすると解決までに最も時間がかかる難題かもしれません。

 

【家財の終活】

 子供が独立したことで発生する余剰家財は少なくありません。
5人で食卓を囲んでいた際のテーブルや無用になった子供用の椅子、
子ども部屋に今も残したままのタンスやエアコン、寝具類。
今後も使うことは無いとわかっていても
思い出が詰まった品々にはなかなか処分という決断は下し難い。

 廃棄するのに抵抗があるならば、品の状態によっては
メルカリなどで売り出したり、最寄りのフリマに出品して
新しい持ち主に渡すという選択もあります。

 一気に、全てまとめて処分、
ではなく、ある程度時間をかけて処分を進めることで
本当に遺したいものが見えてくることもあり得ます。

 

【おカネ(財産)の終活】

 転勤族の方に多かったのが転勤先で開設した口座が
今もそのまま残されていて少なからず残高があるというケースでした。

 他にも新入社員時代に半ば強制的に?加入させられた生命保険や
放置状態にある株式投資など、自分でも現状把握が出来ていないおカネ、
これをすべて把握して整理することがおカネの終活です。

 幽霊口座となっている金融機関の口座は解約し
現在取引を続けている口座へ残高を移す、
保険内容を見直して今の自分に見合った保険に切替える、
株式投資を今後も続けるか、いい機会なので全て解約し
他のマネープランへ切り替えるか?

 これらを検討することで無駄な資産管理が避けられます。

 理想を言えば、
金融機関で2行、証券会社は1社、生命保険も出来れば1社と
いった具合にスリム化することで相続発生時の手間も大幅に
省けることになります。

 

【趣味の終活】

 趣味の内容によって必要な場合と無用な場合があります。
問題は(私がまさにそうですが)有形の収集品が発生する趣味です。

 書籍、陶磁器、絵画、模型、楽器など等、
集め出すと切りがないモノの始末です。

 私のように艦船模型に書籍とダブルパンチの場合
どちらからという選択すら難しく、何からと言った
具体的な選別はいつも後回しでそのままとなっています。

 家族がいる方の場合は家族からの「圧力」といった
外的要因で処分開始となる場合もあるでしょうが、
おひとり様の場合それも期待出来ませんから
あくまでも自己責任・自己判断で行うしかありません。

 第三者から見ればいつでも出来る、
最も簡単な終活では?と思われがちですが、
当事者にすれば最も実行が困難な終活かもしれません。

 

【交友関係の終活】

 最近は50代の友人から年賀状仕舞いの通知が届くなど、
早々と交友関係のスリム化を始めた方も少なくないようです。

 時候の挨拶など半ば義務化してしまった関係だけであれば
この際、一気に手紙仕舞いの挨拶で削除していいかもしれません。

 案外向こうも同じ気持ちで惰性で続けているかもしれませんし
今なら手紙以外にもSNSで連絡を取ることは60代でも当たり前と
なっています。

 切手代も値上がりする現在、
無駄な義務感や世間体、見栄で続ける関係は
真っ先に手を付けるべき終活と言えるでしょう。

 

【お墓の終活】

 いわゆる「墓じまい」の問題です。
相談の多くは郷里に墓地と墓石がある昔ながらの墓、
既に地元を離れて数十年で戻る予定もない、
放置する訳にもいかず、とはいえ老親はまだ踏ん切りがつけられない。

 空き家問題と並んで無縁墓の問題も最近は話題になっています。
自分の住まいの近くに改葬する気があるならば
早い段階で新墓候補を探さなければいけません。
場所やアクセス面の問題もあれば、費用面も無視出来ない問題です。

 家と並んで早めに道筋をつけておくべき終活のひとつでしょう。

 

【ペットの終活】

 特に老親だけで暮らしている場合、
ペットを飼うことで生活に張りを持てる
こういうケースは数多くありますが、
問題は、後に遺されたペットの将来です。

 子どもが引き取れればいいのですが、
多くの場合引き取り手に苦労しているのが現状です。

 理想は自分の手で信頼できる次の家族に引き渡すことが
出来ればいいのですが、心情的に相当の負荷がかかります。

 自分の最期まで手元で育てたい(一緒に暮らしたい)のであれば、
まずは引き取り手の確保に全力を注ぐべきでしょう。

 

【おわりに】

 いかがでしょうか? 10種類の終活、
貴方にとって優先順位が高いものは何でしょうか?

 場合によっては
10種類すべてが当てはまる方もいるはずです。
やり易い、片付けが容易なものから始める、
それはそれで全く間違ってはいません。

 ですが中には
限られた時間内に完了させなくてはいけない
終活もあります。

 自分がやるべき終活には何があるかを精査して
その次は時間制限の有無で手を付ける順番を決める。
行き当たりばったりの終活にはならないよう自覚を持った
行動で円滑に終活を進めて下さい。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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