死後に発生する費用について

【はじめに】

 60代ともなると
そろそろ老親の最期について考え始める頃です。

 誰もが必ず迎える「最期」のその後にも
当人が考えておくべきことは少なくありません。

 なお、子供世代と言っても60代であれば
他人事ではなく自分たちも親と同時に考えるべき問題でもあります。

 今回はその中から「葬儀~お墓~遺品整理」
これにかかる費用面を中心に採り上げてみました。

 

【葬儀の種類と費用】

 最初に考えるべきは葬儀関連の費用です。
事前に本人(故人)がはっきりと意思を表明していればいいのですが
多くの場合、白紙の状態で遺された家族が直面する訳です。

 まず葬儀の種類ですが、
大きく4つに分けられます。

 まず通常思い浮かべるのは
「一般葬」の形式でしょう。

 通夜と告別式を行い、故人の友人知人、
会社員であれば会社関係のメンバー等
生前に親交のあった多くの方に連絡を入れて
葬儀に参列してもらう形式です。

 当然ながら
その規模に比例して費用は最も高額になります。

 最近は葬儀社各社も多彩なメニューを用意して
個別対応にも応じているようですが、
私が知る範囲では150万円前後が平均値とのことでした。

 費用面もさることながら
葬儀のスタッフの手配や参列者への喪主挨拶など等、
精神的、肉体的の負担も最もかかる葬儀と言えます。

 次は「家族葬」です。
通夜や告別式を執り行うのは一般葬と同じですが
参列者が家族や親族、ごく近しい一部の友人等だけで
ごく少数での葬儀となります。

 これも規模や人数によって変動しますが、
上限100万円が目安とのことでした。

 最近注目されているのが
「一日葬」という形式です。

 従来の通夜を無くして告別式のみを執り行うというものです。
通夜振る舞いが無くなる訳で当然その分費用は低く抑えられます。
告別式の内容にもよりますが、50万円前後というのが相場のようです。

 そして最後は「直葬」です。
この形式が話題になり始めたのは4,5年前だったでしょうか、
通夜も告別式も無し、友人も親族も立ち会わないままに
火葬からそのまま菩提寺に直行で納骨という形式の葬儀です。

 いわゆる宗教的な行事を一切しないことで
費用は最も安くなり、概ね30万円台で済ませることが多いようです。

 この形式はシニアのおひとり様にとっては
費用も安く済ませられ、周囲の方に手間や面倒をかけないという点から
関心を寄せる方が増えておりその問い合わせは確実に増えてます。

 またおひとり様でなくても
家族葬でも費用面で遺族に負担をかけるという考えから
直葬で構わないという高齢者がいます。

 ですがこの場合、
却って家族の方が「いくら何でもこれでは」と難色をしまします。
遺族側の世間体や見栄が理由というケースも多いのですが、
やはり親の葬儀をドライに割り切ることには未だ抵抗が強いのも事実です。

 葬儀の形について面倒を避けたいのであれば
やはり生前に明確な当人の希望、要望を家人に伝えておくべきです。

 仮にそれが直葬であっても
本人の遺志ということがはっきりしていれば
変な世間体や見栄に悩まされることはないはずです。

 葬儀の型式
 参列者の選別
 費用面との兼ね合い

 お互いが納得できる形を事前に確認しておくこと。
これだけで遺族の負担もかなり軽減するのです。

※まだ認知度は低いですが「0葬」という形式もあります。
 これは火葬後の遺骨を納骨することなくそのまま火葬場に
 残置して葬儀自体を全く行わない「葬儀」です。

 これを葬儀と解釈していいのかどうかは別にして、
こういう形式も現在はあるという事だけは念頭において下さい。

 

【お墓に関する費用】

 これも葬儀と並んでいろいろなタイプがあります。
特に郷里に立派な代々の墓がある場合でも、
遠隔地への墓参の面倒や自分の代で後継者が絶えることなどから
改葬・墓じまいを進めるケースが急増中です。

 お墓も大きく分けて4タイプあります。

 まずは「一般墓」です。
お墓と言えばこれというイメージの墓となります。
寺や霊園の敷地内にある墓地に〇〇家代々の墓等の墓碑を刻んだ墓石を設置します。

 地方の名家ともなりますと
広大な敷地内に本家と分家の墓石が一緒に設けられているケースもあり
その規模や型式は千差万別です。

 従来からある墓に納めるなら別ですが、
新たに一般墓を用意するとなれば費用面は相当なものになります。
上限は青天井と言ってもいいですし、公営か私営かでも異なります。
あくまでも参考例ですが、一般的な分譲墓地の場合で300万円前後、
それより上になれば場所や規模によって青天井と考えていいでしょう。

「納骨堂」の場合は墓地に墓石といった形式ではなく、
概ね霊園の設備内に設けられています。

 都市型霊園と言われる施設では
施設の建物の地下にコインロッカー形式で納骨スペースが用意されたものや
収納された骨箱を自動搬送で別途設置されたスペースで対面するものが一般的です。

 人気の納骨堂は都心にあり、公共交通機関のアクセスが良く、
近隣に商業施設や観光スポットがあることで足を運びやすく
遺族にとっても管理側にとってもメリットがあると言われます。

 納骨スペースの大小によって
(一人用から家族用まで)価格は変わりますが
家族3人分のスペースのある場合で100万円前後が人気のようです。

 ここまでは
あくまでも個人、家族、一族の専用の墓という括りになりますが、
最近注目されているのが、以下の2つです。

 「樹木葬」でいうお墓は
個々の墓石はなく、
寺や霊園の敷地内にある記念樹の周囲に遺骨を埋葬するものや
お花畑のような中に遺骨を埋葬するような形式があるようです。

 費用面では納骨堂よりもさらに安く済むようですが、
この形も先の葬儀のケース(直葬)と同様、当人は納得していても
遺される家族の方が難色を示すケースが多く見受けられます。

 自分たちは納得できても、
将来自分の子や孫に墓のない埋葬にしたことの説明に自信が持てない。
それ以上に自分たち自身が後になって悔いを残すのではと
なかなか踏ん切りがつけられないことも少なくないようです。

 最後は「合葬」という形式です。
「永代供養墓」という墓に他人の遺骨と一緒に納められるものです。 

 

 納骨堂や樹木葬の場合、
最終的に家族が管理責任を負う一般墓とは違って
墓の管理は寺や霊園が行うことになります。

 仮に将来遺族がいなくなっても管理は寺や霊園が行います。
多くは一定の年数を経過すると個々の納骨スペースから永代供養墓に移され
合葬という形に切り替わります。

 他にも海洋散骨等のケースもありますが、ここでは省略します。

 

【遺品整理に関する費用】

 葬儀を済ませ、お墓に納骨も済ませた、
次は故人が暮らしていた家にある家財の整理です。

 最も大きな「家財」とも言える「家と土地」については
そのまま相続して維持するのか、売却するか、
家屋は解体して更地にして相続するか等
いろいろな選択肢とそれに伴う問題が出てきます。

  あくまでも一般論ですが、
23区内で木造の家屋(2階建て)を解体した場合、
概ね200万円台の費用となるそうです。

 また更地にして土地だけを所有する場合は
ご存じの通り固定資産税が最大で6倍になります。
この点も念頭に置いて不動産の整理を考えなくてはいけません。

 さて、一般的な遺品整理の解釈として
屋内に遺された家財等の整理を遺品整理と想定して
話を進めたいと思います。

 家財の種類や分量によってまちまちですが
概ね20~30万円、場合によっては50万円台の整理費用を
想定しなくてはいけないようです。

 特に厄介なのが、賃貸暮らしだった場合です。
持ち家ならば、何時から整理を始めようが
周囲には迷惑を書かけることはありませんが、
賃貸では退去の時期や次の借り手の問題もあり、
早急な撤去が求められると思った方が無難です。
 
 そうなると余計事前の実態把握が重要になってきます。

 保有し続けて欲しいモノ
 どちらでも任せるといったモノ
 いつでも処分して構わないというモノ

 せめてこの3分類程度は生前に話し合っていて欲しいものです。
本音で言えば、親自らの手で整理を始める、出来れば済ませておいて欲しい。
でしょうが、なかなかそうはいきません。

 元気なうちは、まだ早い、いつでもやれるからと手を出さず、
気力体力の衰えを自覚してくる頃にはもう自分では無理と全て丸投げ。

 親を責める前に今の自分の部屋、室内はどうかを自問して下さい。
自分が整理整頓を日頃から習慣付けしていれば親にも実感を込めた説得となります。

 あくまでも私の考えですが、
遺品整理の中で要注意なのは
「書籍の整理」と「デジタル遺品の発見」です。

 家電製品や家具等は維持するか再利用するか、廃棄するかの判断は
比較的早い段階で下せるものですが、故人が書籍マニアだった場合、
その価値が分からないままの処分は大きな損失に発展する場合があります。
さらに膨大な量を一冊ごとにチェックするとなると、一日がかりでも無理です。
おまけに書棚からの出し入れの際に中腰を強いられることは少なくないので
下手をすると腰を痛めるリスクも生じます。

 以前のブログでも紹介しましたが、書棚の最上段を整理中に脚立から転落、
そのまま入院といった重大事になったケースもありますからバカに出来ません。

 出来るならば、少しづつでも平積みにしておくことでリスク回避を
図るようにしたいものです。

 もう一つのデジタル遺品は、
親世代よりも我々60代シニア世代に課せられる問題です。

 パスワードやIDを家人の誰にも伝えず、書き残してもいなければ
闇から闇に葬られる可能性が大です。

 ネット証券の取引や年会費などが発生する契約を結んでいたら
延々と口座引き落しが続き、最後は残高ゼロで未払いの通告を受けて
初めて相続人がその事実を知るという悲劇にも繋がりかねません!

 交友関係にある友人の連絡先も全てデータ化していると
葬儀の連絡すらままならないという事態も生じてしまいます。

 今では民間の業者の中にこのようなパスワード解除、
ロックを外すサービスがあるようですが、
かなりの時間と費用を覚悟しなくてはいけないとのことです。

 ある業者の場合では
費用は20万円台から、期間は6か月前後から
というバカに出来ない負担になるとありました。

 早々に情報を知りたいという場合には
現時点では対応が難しいようです。

 

 

【終わりに】

 高齢の相談者と話をしていますと
「葬儀は簡素でいいから」とよく口にされます。

 ですが、ここで紹介したように
葬儀以外にもいろいろな費用が死後に発生してくるのです。

 私が開業した12,3年前の時代には
「葬儀やお墓、ましてやそれにかかる費用の話を人前で話す」
なんてことは殆ど見受けられませんでしたし、
こちらから尋ねた際には露骨に嫌な顔をされたことが多々ありました。

 それが今では親自らが葬儀費用簿準備について、お墓の必要性について
ある意味子供世代より積極的に質問をしてくるようになったのです。

 残念ながら60代の我々世代にも
世間体や見栄、に固執して一般葬や墓石ありきの墓を探すケースは
まだまだ根付いているようです。

 個人的な見解ですが、
あくまでも葬儀や墓は生者にとっての儀式です。
故人の想いを知らずに分不相応な出費をすることは
決して故人が喜ぶことではないはずです。

 後悔したくなければ、
 あとで悩みたくないのであれば

 親子での話し合いを躊躇することなく
死後の問題の解決に向けてお互いが元気な時に行動を起こしましょう。
 

 

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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