改めてマイナンバーカードについて

依然として続くトラブルを前に

 この場でも、他のコラムでも、過去何回かにわたって
マイナンバーカードのメリットは何か?
または現状で憂慮すべきリスクはどんなものがあるか?等など、
新サービスや取得促進の為の特典が発表される毎に採り上げてきましたが、
今回もまた採り上げることにしました。

 ですが、残念ながらいいニュースではなく、
依然として発生している人為的なミスやシステム不良による
不具合案件が後を絶ちません。

 今の時点で私が懸念している案件について簡単にまとめてみました。

 

 

 

自治体による返納手続き事例

 こういった事態を憂慮してか、
ここに来て「カードへの不信」という理由で
マイナカードを返納する動きがかなり活発化しているとあります。

 以下に目についた各自治体の対応について紹介します。

 

1)東京都三鷹市
  当該サイトの前文に
マイナンバーカードを自主的に返納する場合(中略)
  返納届を提出する必要があります。」

2)兵庫県神戸市
  同じく前文で
マイナンバーカードを自主的に返納する場合(中略)
 マイナンバーカードの返納手続きが必要になりますので
 住所地の区役所等で手続きをお願いします。」

3)鳥取県鳥取市
  以下の事由に該当する場合は、
 必ずマイナンバーカードを返納して下さい。
  この前文の附則として※付きで以下の文章が続きます。
  ~本人の希望により自主返納したい場合
   本人または法定代理人による
   届け出があれば返納を受け付けることが出来ます。

4)愛媛県松山市
  マイナンバーカードを
 「本人の希望により返納する場合
 カードの有効期間が満了した場合等に、
 窓口で返納届を受け付けます。」

 

 言い回しには微妙な差がありますが、
概ね理由として本人の自主返納する意思が確認出来た場合には、
手続きを経て返納を受け付けるという流れと言えるでしょう。

 ちなみに手続きとしては、これも各自治体による差異はあるものの、
本人が出向く場合では自身のマイナンバーカードを持参することと
窓口で用意される個人番号カード返納届に必要事項を記入し、
提出することで済むというのが概ね各県共通の手続きと言えそうです。

 

 

 

 

マイナンバーカードのあれこれ

 肝心の普及率については今年1月の時点で70%に到達したとありました。
昨年10月の健康保険証との一体化の発表以降普及は拡大したようで
さらに申請件数だけでは運転免許証の保有者を上回ったともありました。

 この流れに影を落とすのが、度重なる不具合の発生でしょう。

 お恥ずかしい話ですが、今回のブログ作成の為に
調べるまで「本人の意向だけで」「自主的な返納が出来る」ことすら
知りませんでした!

 確認はしていませんが、返納理由に「カードへの不信感」や
「政府が信じられない」「情報管理が信用できない」
といったものであっても手続きは粛々と進められたようです。

 不具合の詳細については既にマスコミが報じているので
ここでは紹介しませんが、ヒューマンエラーは論外、
システム不具合は検証期間が短かったのか、
検証自体に問題があったのか? 素人目からすれば
時間さえかけてすり合わせと検証しておけば
もう少しましな船出になったのではと勘繰ってしまいます。

 
 これ以外の懸案事項も少なくありません。

 マイナポータルへのログインにはナンバーカードと
4桁の暗証番号さえあれば可能です。

 たかが4桁、されど4ケタの暗証番号。

 マイナンバーカードに限らず、各種サービスでも
パスワードや暗証番号の設定に関しては
他人に見られない場所での保管・管理をお願いします。
さらに、分かりやすい番号やワードは避けて下さい。
同じ数字やパスワードの使い回しは危険です…

 といった自己責任での設定と管理を謳っています。

 特にスマホに至っては
1台のスマホで各種のサービスにアクセスする際に
複数のパスワードや番号の設定が求められます。

 それ以外にキャッシュカード、クレジットカード、
サイトへのアクセス用のパスワードなど等、
少ない人であっても10個以上の設定と管理責任を負っているはずです。

 若手であっても全てを頭の中の記憶で管理出来る人は
間違いなくごく少数派でしょう。

 

 高齢者の多くがついやっていることに
カードの暗証を記録したメモを、カードと一緒に
保管して、持ち歩いているケースがあります。

 さらには暗証番号を考えるのが面倒と
警告を表示されているにも関わらず、
全て同じ番号(自身の誕生日、配偶者、子供など)を
使い回しているケースも少なくありません。

 前者の場合は、それこそ置き忘れや盗難の際にはお手上げですし
後者は身近な人間ならば、暗証番号は容易に想像出来ます。

 若手であっても同じことで、
信用していた人間の手で情報漏洩の可能性は否定は出来ません。

 

 暗証番号については、もう一つ気になることが。

 今後の方針として、
民間のサービスとの連携を深めていくことで
より利便性のあるカードにしていきたいとありました。

 ですが、金融機関のキャッシュカードでも
通販各社のログイン時に必要なパスワードでも
殆どの場合、何回かご入力を繰り返すとロックがかかります。

 この時、マイナンバーカードが連携していた場合、
同時にロックされることはないのでしょうか?

 この手の整合性は早めに検証をし、安全性や万が一の場合の
リカバリー策を事前に完成させておかなくてはいけないでしょう。

 「何でも何でもこれ一枚でOK」

裏を返せば

 「これ一枚で何にも出来なくなる」

ことになるのです。

※偶然ですが、ちょうど暗証番号についてのニュースが流れました!
 総務大臣の言として、
「4ケタの暗証番号なしでのカードの交付」
 という内容でした。

  解説では高齢者のマイナンバーカードの取得促進の為
 要は高齢者からの暗証番号管理への不安(不満?)への配慮として
 舵を切ったようですが、その分コンビニでの資料取得が出来ない等
 一定のサービスの提供不可となるようです。

 

 

 

個人的に思うこと

 最後にあくまでも個人的な考えを紹介したいと思います。

 私自身の事から先に紹介しますと、
独立開業後は確定申告にはe-Taxを利用しています。
申請方法には現在「マイナンバー方式」と「ID・パスワード方式」
この2つが選択可能です。

 後者はマイナンバーカード非所有者向けで
あくまでも暫定的措置であって、2,3年後には消滅します。
と言われ続けてもう何年でしょうか?

 結局思うようにマイナンバーカードの普及が進まない為に、
未だ多数派?あるいは無視できるほどの少数派に至らない
非所有者相手に稼働させているのでしょう。

 さらにID・パスワード方式では
当然ながらマイナンバーカードは不要ですし、
それに伴うリーダライターも不要です。

 非常に簡単で使いやすく、正直なところ
このままでいいよというのが、本音です。

 逆に言えば、だから普及が進まないのでは?
今の便利さはあえてマイナンバー方式を選ぶ以上に
捨てがたいからこそ、取得に消極的ではと思うのです。

 本当に普及を進めるならば、期限を明示して
確定申告はマイナンバーカードのみの受付とすれば、
これだけでも取得に方針転換する人数は増えると思うのですが…

 

 最後は、
今までのように後になればなるほど
今申請すれば特別にマイナポイントを付与、
各種の特典を用意といったニンジン方式は止めるべきでは?

 初期の時点で率先してカードを申請した方ほど、
何のメリットも享受出来ていない訳です。

 後出しジャンケンの方が良かったのでは?
何度もニンジンをぶら下げていれば、
まだ早いのでは? もっといい特典が出るのでは?
等など、想いを巡らせてさらに申請を躊躇する可能性もあります。

 

 最後の最後に、
今や携帯の契約を始め、金融機関での口座開設、
各種通販会社との契約、クレジット会社とのカード発行の契約等、
あらゆる場面で個人情報の記載が求められています。

 保険会社では病歴や既往症も記載するケースもあります。

 ですが、このような場面で
「個人情報を易々と教える訳にはいかない。」
と言って、契約を取りやめる方はいるでしょうか?

 情報漏洩に関しては、会員名簿の漏洩や流出、
住所録の盗難等といった不祥事は少なくありません。

 それでも大量にカード返納、契約解除といった事例は
殆ど耳にしません。 

 それに比べて、マイナンバーカードの場合は、
ある意味過敏なほどの反応となっているのは何故でしょう?

 

 個人的に思うのは、

 そのリスクよりもなお、メリットが大きい。

 このメリットでそのリスクは容認出来ない。

 この差ではないかと思います。

 

 もちろん、
後者が今のマイナンバーカードの置かれた立場です。

 

 さらには背後に国(政府)がついているのだから
民間に比べ、より高い安全性と信頼性を求められて当然なのです。

 

 どうも今の状況を登山で表現しますと、
下山の時間だけを最優先にして道に迷っているものの、
しゃにむに下ろうとして、ルートを外し、獣道や藪の中を
突き進んでいる初心者をイメージします。

 道に迷ったら元の位置まで戻る勇気を持つこと。
これさえできれば迷走や遭難のいくらかは防ぐことが出来る。

 指導的立場にある方の中の誰かがこれを口にして欲しいものですね。

 

 さて、来年の今頃、
マイナンバーカードの話題を採り上げた場合
どういった内容で取り上げられるか、今から楽しみです。

 

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この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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ブログ「新・先憂後楽」
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