遺言書の法務局保管制度

はじめに

 自筆証書遺言の法務協保管制度については
いろいろな場で紹介されており認知度も高まっているようです。

 そんな中、
今度は自筆が絶対要件の筈の遺言書本文の作成までが
パソコン入力での遺言書本文の作成を認めるような話題も出てます。
今後さらに大きな変化があるかもしれませんね。

 今回はパソコン作成の件はさておき、
現在の保管制度についての基礎を改めて紹介したいと思います。

 

 

手続きの流れ

 まず「事前予約制」であることに注意して下さい。
電話でもネットからでも可能ですが、出来れば電話予約で
持参するものの確認や法務局までのアクセスの確認等、
直接回答を聞くことが出来るので私は電話の方を推奨します。

 

保管出来る法務局は?

1)自分の本籍地
2)住所地
3)所有する不動産を管轄する法務局

 の3か所から選ぶことが出来ます。
多くの場合は2)の今居住する住所地を管轄する法務局を
選択するのではないでしょうか?

 

持参するものは?

 当然ですが、
 完成した自筆証書遺言書。

 申告書
(法務局の窓口にもありますが、法務局のHPに掲載されているものを
 ダウンロードしプリントアウトしたものに記載でも可です。)

 本人確認書類(マイナカードや運転免許証等)

 収入印紙(法務局で購入可能です。)

 

 予約制とはいえ、お役所仕事でもあり
内容も内容ですので、スムースにいったとしても
最低で1時間は覚悟した方がいいというのが
経験者の談でした。

 もちろん、
内容に不備があれば下手をすれば即出直し、
また予約を取るところから始めることになるので
一回勝負でケリを付けたければ、慎重を期すべきです。

 

 念のため、電話予約の際には
上記に挙げた以外に持参すべきものの有無を
確認するようにしてください。

 

 

その他の注意事項

 遺言書は法務局ではコピーが取れません。
手元に写しを置いておきたければ事前にコピーを
取っておかなくてはいけません。

 無事に受付が完了すると
「保管証」が発行され、渡されます。

 遺言書を手元で保管し管理するリスクは
保管制度で軽減出来ます。

 ですが、その分今度は
「保管証」の保管と管理に責任を持つことになる訳です。

 

 

おわりに

 余談になりますが、
上記の保管証や遺言書の写しの保管場所に苦労する方も
少なくはないのではと思います。

 例えば家人に保管場所は知られても
容易に手がさせないような場所があればひとまず安心できる…

 あくまでもかなり特異な事例としてですが、
参考までに以下に紹介します。

 

 納骨堂内の骨壺と共に安置

 いわゆる都市型の霊園が運営する納骨堂で
安置場所がコインロッカー式のケースの方でした。

 この方は奥様に先立たれた際に、
自分の分を含めて骨壺2つ分の広さの
安置場所を契約したのです。

 

 ここではロッカーの開閉は管理スタッフが保管する
専用の鍵でしか出来ない仕組みでその都度参拝者は
管理事務所に開閉を申し出て同席の下で開閉するものでした。

 ですから相続人の誰かが単独でかつ他人に知られないで
ロッカーの開閉をすることは叶わず、当然中に保管した物、
(遺言書や土地の権利書等の)重要書類等を勝手に見ることも
持ち出すことも出来ないという点に着目したとのことでした。

 
 金融機関の貸金庫の場合、
原則は契約者本人しか開錠は出来ず、
相続発生時には相続人全員の合意が必要となるなど、
煩雑な手続きを要します。

 但し、
金庫内に入室の際に使用する2種類の鍵は
契約者が保有しています。

 この為、
同居の家族によって無断で使用されることは
避けられません。

 多くの場合、
貸金庫室にはフリーパスで行けますから
鍵さえ入手出来ればいわゆる「やりたい放題」です。

 決して確実な保管場所とは言い切れない余地があるのです。

 

 これに対し
この方法は一種の「私設の保管金庫」とも言えます。

 言われてみれば、安置場所であるロッカー内のスペースは
ある程度の余裕が設けられています。
 骨壺の他にも小型の遺品や位牌を収めるケースもありますので
書類の類は場所に困ることはまずありません。

 扉の開錠は必ずスタッフを通さなければいけませんから
こっそり、誰にも知られずという行動は事実上不可能です。

 またその場にスタッフが同席しますから
勝手に持ち出す場合は現場を見られての行為となります。

 よほどの言い訳を用意しておかなければ
疑念を持たれるのは確実でしょうし、
場合によっては他の相続人たる子供などに連絡されるでしょう。

 遺言の作成者も堂々と遺言書の保管場所を家人に伝えることが出来、
貸金庫のような面倒な手続きをせずに相続の発生時には遺言書が
入手出来るというものでした。

 

 この話を聞かされた際には奇想天外な!と思ったものですが
保管場所をどうするか、保管の事実と保管場所をいつ、誰に伝えるか?
家人に見つからないような場所ではそのまま葬られるリスクがあり、
伝える人の人選を誤れば相続人同士の争いを引き起こしかねない。
急なお別れとなれば、それこそ誰にも、何も伝えれれないままとなる…

 決して推奨する気はありませんが
場所はわかっているものの、うかつに手を出せない場所。

 他にあるかと問われれば、即答出来ないのも事実です。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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