これからは使い易くなる? シン・法定後見制度とは

 

【はじめに】

 最近老親の言動に異常を感じてきた
同じ行動や発言を繰り返すような気がする?
忘れ物が多くなってきた…

 あるいは自分たちシニア世代の中でも
今までなかったような凡ミスを繰り返したり
旧友の名前や昔暮らしていた地名が出てこない…

 親でも、自分でもこういった症状が出てくれば
自然と「もしかして認知症?」と不安になるのでは?

 判断能力の低下した人への支援として
後見制度、法定後見があることについては
ここに来てかなり認知度は高まってます。

 ですがなかなか実際に制度利用となると
今一つ普及が進んでいないと言うのが実態です。

今日は法定後見について最近話題になってきた
「法定後見制度の改正案」について紹介します。

【法定後見の仕組みとは】

 法定後見についてはこの場で何度も採り上げてきましたが
当人の判断能力が「低下した後に」家族等が申し立てることで
家裁が後見人を選定することから始まる制度です。

 後見人は当人の代理で財産管理や契約等の法律行為をすることや
当人がした不利益な行為を取り消すことが出来ます。

 当人の判断能力のレベルに応じて保護の必要性が高い順に
「後見・保佐・補助」の3つの類型に分けられ
後見がもっともその権限が高いものとなっています。

 現在3つの類型に分類されている法定後見は
それぞれに
判断能力の基準、
代理権の範囲、
同意権・取り消し権の範囲が
定められています。

 「後見」の場合判断能力は「常に欠く」であり
代理権の範囲は「財産に関する全ての法律行為」で
同意・取り消し権は「日常生活に関する行為以外の全て」
という基準となります。

 「保佐」の場合は判断能力は「著しく不十分」
代理権の範囲は「本人が同意し、家裁が認めた範囲」
同意・取り消し権は「不動産の売却、相続の承認等民放13条1項記載の行為」
という基準です。

 「補助」の場合は判断能力は「不十分」
代理権の範囲は保佐の場合と同じ、
同意・取り消し権は「保佐の場合のうち、申し立ての範囲で家裁が認めた行為」
が対象となります。

 さらに、後見人はひとたび選任されれば原則終身利用となります。
利用の終了は「利用者の死亡」または「判断能力の回復」とされ、
事実上途中での解約は不可能となっています。

 一般的に家裁が選任する後見人は
弁護士等の専門職が就くことが多く
当人の財産額に応じた報酬が毎月発生します。
家裁の示す報酬基準は概ね月額2~6万円となっています。

【現在の問題点と改正案】

 後見人が親族でない理由の一つは
当人に内緒で勝手に財産を使用出来てしまう点です。

当人の為と言う言い分で自家用車を買い替える、
電化製品や家具等を同じ理由で新規購入をする。

 特に親族後見人が同居している家族の場合は
なかなか外部に知られることも少なく、
私的流用が発覚しにくいのも問題でした。

 その為、専門職が後見人に就くことで
厳正に当人の為に財産管理を徹底出来る、
はずでしたが、ここにも綻びが生じています。

 残念ながら選任された専門職後見人が
被後見人の財産を私的流用するケースが
新聞、テレビで採り上げられるケースは少なくありません。

 中には親族との面会を厳しく制限する等で
横領の事実を隠蔽するといった悪質なケースもあり、
先に書いた終身利用への問題が指摘されてきたました。

 この逆に判断が難しいケースもあります。
家族との旅行や食事会といった長年続けてきた行事で
家族が当人にとっても良かれと思う出費を認めない
または当人が入所した介護施設とのサービスの提供に関する
ミーティング等に後見人が一度も顔を出さないといった行為、
この様なケースの場合、適当・不適当の判別が難しく、
このレベルのトラブルではなかなか交代の理由として
採り上げられず、家族から不満の声が出ていました。

 中には何十年も親が費用を支払って正月のおせちを発注し
年に一度の家族全員が揃っての新年の集いを続けてきたものの、
親が認知症になり後見人が就いたとたん当人のおせちは認めるものの
他の家族の分を親(被後見人)の財産から支払うことを認めず
親族との間に深刻な亀裂を生じた事例もありました。

 親族の言うように年に一度のささやかな集いの費用にまで
指図するな!という感情もわかりますが、その反面
後見人から見たらこんな豪華な集まりを全て親の財産で賄うのは
明らかに財産管理面で問題ありという指摘は正当なものとも言えます。

 現状では親族側の泣き寝入りというのが一般的なようです。

 この様な背景から
1月末に法制審議会がまとめた要綱では
以下のような改正案がまとめられてます。

 まず類型に関しては従来の3分類を廃止、
判断能力にかかわらず「補助」に一本化する。

 代理権、同意権、取消権に関しては
必要な事項毎に申し立ての範囲で家裁が認定し
不要になればその時点で終了可能とする。

 さらに後見人の交代も柔軟な対応を可能とし、
従来は後見人が老齢や病気などで辞任するケースと
不正行為が発覚した際の家裁による解任(以降は欠格事項になる)
が主な交代理由でした。

 改正後はこれに加えて
「本人の利益の為に特に必要がある時に家裁が解任するが
このケースは欠格事項とはしない」が新たに設けられるようです。

 これによって前述したような親族側の要望、または当人の意向が
叶うケースが増えると期待されます。柔軟な利用が可能となれば
後見制度自体の利用率も上がるのではと言う副次効果も期待されるようです。

 

【残る課題】

 仮にこの改正案が成立したとして、
気になるのは施行以前に法定後見を利用している場合でも
この改正案が適用されるのか、施行後の利用からが対象になるのかは
現段階では明確にされてません。
この点も含めて改正案の推移を見守っていきたいと思います。

 ここでは触れませんが、
後見制度には法定後見に加え任意後見もあります。
最近は家族信託にも注目が集まっています。

 シン・法定後見と併せて任意後見、家族信託の内容も理解し
自分にとって適当と思われる制度を検討することも必要ですし
この3つの支援策についての解説や利用のハンドブック的なものが
用意されることでより理解と利用は増えていくのではないでしょうか?

 さて、ここで紹介した内容については
現時点ではあくまでも「改正案」の段階ですので
今後の経緯によってここで紹介した内容が変更される場合も考えられます。
内容が確定した時点でまた改めて新制度の内容を紹介したいと思います。

 

【終わりに】

 最後になりますが、特におひとり様の場合
自ら動かなければ制度の利用は出来ません。
判断能力の低下後では家族による申し立ては無理でしょう。
後は自分自身で申し立てが出来ればとなりますが、
症状が進んでいた場合それも困難なはずです。

 となりますと、現時点では
正常な判断力を有しているうちに自分の意思で後見人を決められる
任意後見の利用を検討するのが最優先となります。

 身近な存在の中で貴方の将来を託せる人物はいるでしょうか?
その選別にも時間がかかります、先送りは自分の首を絞めることになります。

 また自治体によっては「市民後見人」制度を設けているので
こういった情報についても積極的に収集を図るべきでしょう。

 今回の法定後見の改正については
実のところメリットが多いのは家族のいる家庭の場合ですから
おひとり様は自らの手で「身上監護と財産管理」に関して
責任を持って対処しなくてはいけないことを自覚したいものです。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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