【はじめに】
故人の葬儀も終え、一段落した後には
遺産相続の一環で故人名義の口座の相続手続きが始まります。
今回はゆうちょでの手続きについて簡単に紹介したいと思います。
相続が発生した際、故人名義の金融機関の口座は
その事実を把握された時点で凍結されることは
既にご存じかと思います。
郵便局の場合も他の民間の市中銀行と同じ様に
名義人死亡の連絡があれば(その事実を確認すれば)
当該口座は即時凍結されます。
どの金融機関も同じことですが、
名義人死亡の連絡は「出来るだけ速やかにお願いします」と答えます。
(昔は自宅安置等が多く、玄関先に忌中の掲示を出したり、
近所の方の雑談から通勤途上の行員や局員が口座名義人の死を把握し、
遺族からの連絡前に死亡の事実を掴んだという事例もありました。)
とはいえ、遺族(当事者)側にも言い分はあります。
故人が自動引落し契約を結んでいた関係先を調べ、
死亡の事実を伝えませんと口座凍結で先方に迷惑をかけることになります。
速やかに該当する契約相手を把握して本人死亡を伝え
一時的に振込用紙での対応を申し出てスムースに進むようにしたい。
または近日中に発生する支払いがあるならば故人の口座の時点で処理したい。
など等、凍結前に処理したい案件がある事も事実です。
例えば故人の住まいの公共料金、故人が契約していた健康食品や宅食、
年間購読の書籍等出来る限り把握しているものについてはその旨を伝えて
契約解除したい、最終の引落し予定日を確認しておけば引落しのタイミングと
口座凍結のタイミングの調整も図れます。
口座凍結からの相続手続きの開始時期は個々の事情をよく検討して
なるべく関係先に負担をかけないようなタイミングで行いたいものです。
【1回目の訪問】
1)相続発生の届出
直接窓口でも最寄りの郵便局へ電話連絡でも可です。
この時点で今後の手続きの流れを尋ねることになります。
2)窓口に出向いた場合にはその場で手続きの流れの説明を受けます。
その後「相続確認表」というものを受け取ります。
以下にリンクを貼っておきます。
相続確認表
たまに事前に必要とされる公的書類
(故人の戸籍謄本や相続人の印鑑証明等)を
揃えてから出向く方がいますが、最初の訪問時には不要です。
上記の相続確認表を記入した後に書類一式を提出しますので
初回の訪問時に用意しておく必要はありません。
【2回目の訪問】
前述した相続確認表に必要事項を記入します。
先には窓口でこの書類を受け取ると書きましたが
事前にHPに掲載された「相続確認表」をダウンロードし
プリントアウトしたものに記入しても構いません。
自宅で必要事項を記入してから訪問すれば
1回目の訪問時にこの手間は省くことが出来ます。
【3回目の訪問】
1)事務センターから「必要書類のご案内」が郵送されます。
最寄りの郵便局の窓口では相続確認表の提出までで
この案内が届いてからが手続きの本番スタートとなります。
同封された書類に沿って必要な公的書類を用意します。
故人の出生から死亡迄の戸籍謄本や相続人全員の印鑑証明等は
他の相続手続きにも必要となります。
念の為複数枚入手したほうが効率的に手続きが進められます。
手続きに必要な公的資料は事前に分かるので郵便が届く前に
市区町村役場で入手しておくことも可能です。
他に「相続請求書」が同封されているので必要事項を記入します。
不明な点があった場合は「貯金事務センター」に連絡して確認します。
※貯金事務センターから電話で相続内容や相続人の範囲等について
確認する場合もあります。
2)必要な書類全てが整ったら、最寄りの郵便局に提出します。
この場合自宅近くの郵便局か職場近くの郵便局かを考慮します。
手続きの主体が会社員の場合なら職場近くの方が行きやすい場合があり
自宅近くは却って行ける時間に苦労するケースがありますので
どこで一貫して手続きをするかを予め決めておきましょう。
基本は「相続代表人」が出向きます。
相続人が複数いる、2人しかいないもののもう一人が遠隔地に暮らす
など等色々な状況があるので誰が代表人となり手続き全般を担うか?
事前によく協議して決めておきませんと、後になって揉め事の火種にも
なり兼ねません。
急ぎたい気持ちは分かりますが手順は慎重に進めましょう。
なお、代理人が手続きをする場合には委任状が必要になります。
来店される方は自身の身分証明が必要になるので
免許証やマイナンバーカード等公的な身分証明書を持参します。
内容に不備がなく郵便局で預かることになれば「預かり証」が
発行されるのでそれを保管しておきます。
相続の場合、相続発生日の貯金残高が相続財産の対象になります。
「死亡日の残高」を正確に把握すると共に
「故人名義の口座がいくつあったか」も調べておく必要があります。
その為に、以下のような書類を作成して提出します。
【入金】
書類に不備がなく、手続きが混みあっていなければ
概ね3回目の訪問での書類の提出から2週間前後で
代表相続人名義の「通常貯金の」口座へ入金されます。
※入金の際にメールや郵便等での入金連絡はありません。
2週間前後経過した時点でゆうちょダイレクトでの確認や
ATMでの記帳や残高照会で確認することになります。
冒頭では口座凍結の連絡はタイミングを計ってと書きましたが
凍結が遅くなればなるほど、入金の期日も比例して遅くなります。
何かしら一定額の資金が必要と言った場合に
遺産相続の資金をあてにするならば
その期日との兼ね合いも事前に十分考慮しておくことです。
故人の貯金の振込先を決めてから以下の書類を作成し提出します。
【終わりに】
先に紹介した公的書類は郵便局で写しを取ります。
提出するのはこの写しの方なので原本はその場で返却されます。
最近では民間金融機関でも書類は確認後写しをとって
原本は相続人に返却されるようなのでこの手続きにおいては
原本は1部で問題ありませんが、民間の手続きにはいったん郵送し
確認後に原本を郵送で返却する手続きもありますので手続きの順番を
事前に調べておくか、2~3部を予備として入手しておくか?
この辺りも個々の事情を反映させた必要部数を用意しましょう。
仮に故人名義の貯金等の実態が不明確な場合は
「現存調査」の請求をします。
現在は一人につき一つの口座しか持てませんが
~以前には複数の口座を持つことが出来ました。
古くから郵便局に口座を持っていた場合、
念の為調査をした方が無難でしょう
相続人が一人っ子や子のいない配偶者だけであれば
上記の手続きは全て自分一人で進めることが出来ます(かなりの手間ですが)
ですが複数の相続人がいる場合(現実はコチラが圧倒的に多いです)
さらに遠方に暮らす相続人がいたり疎遠な相続人がいた場合、
下手をすれば何十年も音信不通の相続人がいる等、個々の事情によっては
なかなか総意をまとめることが出来ずに時間だけを浪費することもあります。
経験した事例ではいきなり「相続代表人」が誰かで揉めに揉めて
2か月以上を空費したことがありました。
比較的手続きがシンプルなゆうちょでもこのような手続きを要します。
市中銀行の場合にはこれ以上の手間がかかりますから
複数の相続人がいて被相続人が複数の金融機関に口座を有している場合は
事前によく打合せをして役割分担なり分割の内容を決めておくことを強くお奨めします。
この記事の著者

- 寺田淳行政書士事務所 代表
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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