【はじめに】
最近目立った相談の一つが
高齢の親が終活や相続問題に不熱心、
どころか無関心、無気力の為、前に進めない。
といった子供側からの相談がありました。
相続が争族になってしまう原因にもなってしまう
「親の無関心、非協力」について紹介します。
【妻に先立たれて時が止まって】
以下は実際の相談者の実例です。
相談時は73才の男性で63才で会社を定年退職しています。
現役時代から家の中の事は全て奥さん任せで
退職後もその傾向は変わることがなかったそうです。
事態が一変したのは3年前に奥さん急逝してからでした。
住宅ローンは完済、子供はみな独立。
年金と投信で日々の生活に不安はなし。
借金や保証人も皆無で暮らしに不安要素はありませんでした。
とはいえ最近体調を崩したことから
終活、相続への関心を高めたとのことで相談に来られました。
しかしながら、話を伺うと怪しい感じになってきました。
自宅の家財は奥さんが健在だった時のまま全く放置したままでした。
~奥さんの趣味の品々(着物や和装小物、茶器や食器類等)
~体形が違いすぎて無用の長物と化した自身の衣類等
~なぜか4台もある扇風機、3台ある掃除機等々
今の生活には無用な品々がそのままの形で残されたままなのです。
その代わり
自分の趣味のゴルフセットや時計のコレクションはしっかり把握。
本数やブランド名、購入価格、保証書の保管、現物の保管も完璧です。
大切な自宅の登記簿に関しても奥さんが保管していたため
未だに自宅内のどこかとしかわかっていないようですし、
同じく実印や通帳も、各種の保険証券も保管場所を知らない!
さらに、それなのに、未だに徹底的に調べてもいない!
当の本人は、「自宅内にあることは確実だから。」
「探せば必ず出てきます。」と言いますが、
今までそれを行動に移したことはないようでした。
さらに相談時に口にしたのは
「話し相手の妻が亡くなってから何もすることがない」
無いわけはないのですが、
この方は退職から10年、一人になってから3年の間、
何一つ終活どころかそれ以前の断捨離を全くしていないのです。
そして会話の中での本音が
「もう年だし、面倒なので後のことは全て子供たちに委ねたい」
財産目録も用意せず、
不動産の登記に関しても確認せず、
家財の始末も放置で子供に丸投げ、
さらには相続に関しても遺言を残す気もないような口ぶりでした。
【争族の原因は親のせい?】
一般的に争族、争続化する原因としては
欲深い兄弟間での争いや 生前の依怙贔屓へのリベンジといった
感情的なこじれから「相続人である子供に起因する争い」
と思われがちです。
しかしながら最近では上記の例のように、
無責任、無関心な親が原因での争族発生もあるのです。
話を続ければ、
亡くなった奥さんは自身の実家の墓に埋葬し、
年1回は墓参りには出向くそうなのですが、
その際に郷里の実家や畑等の登記簿は一度も確認せず、
離れた場所にある別の土地の現状確認にも足を運ばずで
財産調査の気持ちは全く感じられませんでした。
シビアな言い方ですが、
本人は亡くなってしまえばそれまで、
もはや現世で何も出来る事はありません。
その分、そのツケを払わされるのは子供たち相続人です。
原則10か月という
相続税の申告と納付までの決して長くはない期限の中、
財産調査をゼロから始める苦労は想像以上です。
さらにその後には遺産相続が待ち構えています。
遺言を残していなければ遺産分割協議が必須となります。
この繁忙さによって
兄弟間で無用な争いを生じることも多々あるのです。
親さえ、財産調査をしておけば、
それを踏まえた遺言書を作成し、
相続についての想いを遺しておいてくれれば
相当な時間短縮と負荷の軽減になるものを…
このサイトでも何度か書きましたが、
長く入院、通院をした高齢者ほど、この点については用意周到です。
元気一杯な親が突然アクシデントに見舞われた時が一番厄介です。
自身の怪我や疾病による気力喪失もそうですが、
ここの事例のように伴侶に先立たれた男性は特に要注意です。
私の知る範囲では、夫に先立たれた妻は
比較的早い段階で子供の為にと自身の整理に関心を向けるようで
男性の場合とは大きく異なるようです。
特に家庭の事は妻に一任といった「依存型亭主」は
喪失感からくるダメージは相当なもののようで
自分の生活にすら関心を持たなくなる例もあり、
そうなれば子供の為といった考えや行動が生じないのも
分からないでもないことではあります。
そのせいでどんな結果が生じてくるか?
本来ならば、
子供同士に修復困難な亀裂を生じさせたい親など
いるはずがありません。
ですが自分が出来たはずの行動をしなかったことで
子供たちにかけなくて済んだはずの苦労をかける。
最後の最後に親子間、さらに子供同士にも
亀裂を生じさせるようなこと、
誰も望むはずはないのですが…
【おわりに】
最後に、同様の事例を紹介します。
その方は子供は一人息子だけで
やはり妻に先立たれ、最近自身も足腰に不安を覚え、
施設への入所を検討していた中で、息子への相続を考えたそうです。
ですが、相続人はただ一人で、強いて遺言書を用意する必要はない、
当然遺産分割協議も無関係なので、後は息子に任せるつもり。
こういった考えをお持ちでした。
確かに相続に関しては揉める要素はありません。
全てを一人息子が引き継ぐだけの話ですが、
相続の問題はそれだけではありまえん。
その方の話を受けて、こちらからは
「何もしないまま相続発生となれば
あれこれこういった問題や手続きが必要になります。
その為にはこれこれこういった情報を息子さんに
もれなく伝えておかなくては大変な手間を息子さんに
強いることになりますよ。」
と、若干警鐘の意味を強めに説明しました。
さらに最後の詰めとばかり
「後は任せるとか、お前の好きにしていいと言えば、
何となく責任を果たしたように思うかもしれません。」
「ですが好きにするにも事前の情報がなければ
好き勝手には出来ませんよ。」
「後は任せたと言うのは丸投げしたという意味です。」
さすがにこの方はまだ気力が維持されていたようで
その後すぐに息子家族といろいろ打合せを始めたそうです。
相続するほどの遺産がないから
子供は一人っ子だから
兄弟仲は間違いなくいいから問題は起きない
親の側の勝手な想いは、
場合によっては却って子供の重荷になるのです。
今更ですが、
気力喪失にならないうちに
行動する体力が残されているうちに
親としての行動を起こすことを
真剣に考えて頂きたいものです。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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