戦国武将の事業承継に学ぶ

【はじめに】

 今日は一応終活の中の「仕事=事業承継」に関する話題です。
ですが、いつもとは異なり、戦国時代の名将の事業承継(後継者問題)を
採り上げてみました。

 一部は一般の相続・遺言問題にも絡むものがありますが、
3連休前のコーヒーブレイクの話題にでもしてもらえれば幸いです。

 

【上杉謙信の場合】

 ご存じの通り彼は戦国期にはありえない独身を貫きます。
その為、養子を迎え入れましたが、そのどちらを後継者にするかを
明らかにはいないまま急逝してしまいました。

 その結果、後継者候補2人(景勝と景虎)の間に血で血を洗う
凄惨な跡目争いを生じ、上杉家自体の弱体化を招きました。

 まだまだ健康、と言う過信の結果が
お家の危機を招いたのです。

 健康(実際は違ってましたが)と言う思い込み、
当時の平均寿命が50年と言われた中での49才での逝去ですから
やはり万が一を想定しておくべきでした。

 

【武田信玄の場合】

 彼には後継候補になる男児が4人いました。
ですが長男は自死に追い込まれ、
次男は生まれつき目が見えず、
三男は早世してます。

 結果として最年長の四男の武田勝頼が後継者、
となるはずが、遺言では後継者は勝頼の息子信勝、
と指定してしまいました。

 勝頼自身は息子が元服するまでの(陣代)後見人でしかなく、
信玄以来の古参の家臣との間には絶対的な主従関係は生まれなかったようです。
さらには旧家臣と勝頼によって引き立てられた「新参の家臣」との間にも
不協和音が生じることになり、その後の戦いでは致命的な敗北を喫したり
大きな判断ミスを犯すことから最後は家の滅亡を招きました。

 たとえ遺言を遺したとしても
遺された者が納得のいく内容でなければ「死人に口なし」ですから
遺言に違背するケースは間違いなく生じてしまうということです。

 独りよがりな内容で遺言を遺しても、
今の時代であれば遺産分割協議でひっくり返されることも
十分念頭に置いて遺言や相続について考えるべきでしょう。

 

【織田信長の場合】

 超ワンマン・カリスマ経営者の突然の死、
それに加えて後継者までがほぼ同時に死亡してます。

 既に家督は長男信忠に譲ってはいたものの、
事実上は信長の天下はそのままでした。

 これが遺言も残せないまま、後継者も
ほぼ同時に死亡です。

 先の二人と違い、生前に相続?を済ませ、
最低限の責任は果たしていました。

 ですが後継者まで同時に亡くなるまでは
さすがに想定外でしょう。

 その後の織田家はご存じの通り
遺された次男以下の跡目争いの中、
たたき上げの重役(秀吉)に会社を乗っ取られてます。

 この事例から見えてくるのは、
いくら万全の用意をしていても
想定外の事態は起こるということ、
その際にどういう対応が出来るか迄想定するのは、
さすがに無理と言うものでしょう。

 天才信長にしても、見通せ中なかったのです。
凡人の我々は考え得るあらゆる事態を検証することで
同じ轍を踏まないようにしたいものです。

 

【豊臣秀吉の場合】

 後継者選びでの失敗で会社(政権)どころか
一族迄喪う羽目に陥りました。

 長年実子に恵まれず、親族から後継者候補を選ぶ。
そこまではいいのですが、いざ実子が誕生後は
疑心暗鬼もあったのか、数少ない一族を抹殺します。

 その結果、筆頭副社長一派が事実上会社経営を牛耳ることに。

 この点は遠く鎌倉時代の源氏と同じ傾向です。
源頼朝も苦労を共にしてきた弟を次々に謀殺し
会社繁栄の礎となった功労者(の家臣)すら次々と
滅亡に追い込んだ結果、直系の血筋は絶え、
妻の実家がお家を乗っ取りました。

 豊臣家も最期は妻(正式には側室)によって
会社運営はどんどん傾くこととなり、
「戦」という株主総会の結果、全てを失ったのです。

 ナンバー2をどうやって育てるか?
後継者問題についてどうやって役員の同意を得るか?
やはり独善、独裁ではいい結果には繋がらないようです。

 

【徳川家康の場合】

 最後はやはりこの人でしょう。
無念にも最適の後継者と目された長男を排除することになったものの
その後は冷静に後継者選びを進め、次男ではなく三男を指名してます。

 さらにこの三男が自分の跡目を考える際に長男を差し置いて
鬼嫁?の推す次男をと揺らいだ際には自らが最終決定を下す等
常に先を見る目を曇らせることなく、3代までで盤石の政権基盤を
築きあげたのです。

 前述してきた織田家は一代限り、豊臣家は何とか二代まで、
武田家は信玄の次代で滅亡、上杉だけは大幅に弱体化しつつも
なんとか家業は潰さずに明治維新を迎えました。

 

【終わりに】

 如何でしょうか?

未だに遺言を遺さないままの貴方、
相続について何の準備もしていない貴方、
特に仲の悪い兄弟を子供として抱える貴方、
その反対に子のいない貴方、

 その結果が上記で紹介したように
子供や孫が悲惨な結末を迎えてからでは遅いのです。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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