「出会い・運・営業力」~私の起業・開業の場合

【はじめに】

 この9月で脱サラしてこの仕事に就いてからちょうど15年が経ちます。
振り返ってみればアッという間の時間でしたし、
反面よく続いたなと思うのもまた事実です。

 全ては自己判断、自己責任を負う自営業で
ここまで継続する事が出来たのはやはり「出会いとそのタイミング」であり
更に士業でも営業力が第一と言う視点でスタート出来た事の2点と思います。

 今日は今の仕事に関する個人的な想いを紹介したいと思います。

 

 

【営業は最初からカスタマーファースト】

 書士会に登録し、最初の説明会の場で真っ先に質問したのは
「営業時間に決まりとかありますか?」でした。
 
  まず「営業」という言葉に周囲が反応したことを覚えてますし
その時のスタッフは一瞬戸惑いつつ「別に何時から何時という規制は
ありませんが?」と答えてくれました。

 事務所を新橋駅前に構えた時から
メインの相談客はサラリーマンと想定し
平日に相談に事務所に来られる時間帯は
「出勤前か退社後」イコール「早朝か夜間」しかない、
だったらその時間に事務所を開ければいいと考えたのです。

 なので当初から
「完全事前予約性」
「平日7時から、夜は何時からでも」
というスタンスで関係各所に事務所開設の連絡を入れました。

 好運にも狙いは当たり、
朝は出社前の7時半から、夜は宴会帰りの22時からといった
一般的にはとんでもない時間帯での営業(相談業務)を開始しました。

 これも自身が長年サラリーマンだったために
役所に申請や届出等の用事があっても日中は当然仕事です、
土日は役所が閉庁で転勤のたびに苦労したものでした。

 この経験から相談者が時間に余裕がある時に
足を運べるような事務所なら他との差別化にも繋がるし
無意味なディスカウントや宣伝費もかけなくていい、
という考えに至ったのです。

 自分のペースで出来ることを
 自分の都合のつく時間内で

 ではなく、お客様のペースに合わせて
お客様の都合を優先で対応することは、
どんな商売にも共通して言える成功の鍵でしょう。

 ちなみに、当初土日にわざわざ自宅から離れている事務所に
貴重な時間を使って相談には来ないだろう=完全週休2日は確保?
という読みは見事に外れました!

 却って土日の方が会社の同僚に遭遇しない為
より安心出来るとか、仮にそれでも不意に遭遇したとしても
私の事務所が商業ビルの中と言う立地面から
何とでも言い訳が出来るのでありがたいという
想定外の答えには驚かされました。

 この為、平日は早朝や深夜で土日は昼間に営業と言う
変則的な営業時間帯での仕事が続きました。

 ただ完全予約制でしたから、時間の調整は可能で
当てもなく事務所のデスクに客待ちで居続けた訳ではないので
公私の切り替えはキッチリ出来ていました。

 その後、サラリーマンに加えて日中に自由時間がある
リタイアしたシニア層や専業主婦、平日が定休日の自営業の方、
稀に学生からの相談も増えてきたおかげで
平日の昼間にも予約が入るようになり、朝・昼・夜といった
三部制の営業スタイルにも進化していきました。

 

【想定外の実績と失敗から】

 先に失敗事例から紹介しましょう。
ブログやコラム開設の際に専門家からのアドバイスで
お問い合わせサイトをしっかり設け、事前にある程度の
相談内容を把握出来れば相談時間の短縮にもなるし
相談内容の行き違いや勘違いも最小限に出来るという事で
住所氏名、連絡先に加えて相談内容の記入欄を設けたのですが
これが大外れ!

 当初から最初は電話でのコンタクトが100%でした。
さらには今でも90%以上は直接電話が最初の相談となっています。

 来所された相談者に尋ねると一様に口にされたのが
「個人情報を記録に残したくない」でした。
専門家とは言え、見も知らぬ他人にいきなり
住所氏名、連絡先を明かし、悩み事を記録すること、
これに対する抵抗は想像以上でした。

 しつこく勧誘の連絡が入るのでは? 
 自宅や会社にまで訪問されるのでは?

 絶対にないとは言い切れませんが、
では自分の身に置き換えればどうかとなれば
理解出来なくもない事ではありました。

 なのでその場で消え去る会話での相談に偏ったのです。
これは他の士業の相談の場合も同様の例があると聞かされ
どの分野でもなかなか解決出来ない悩みのひとつのようでした。

 今でもお問い合わせサイトは活きていますが
稼働させる為の妙案も無く、ほぼ休眠状態のままです。

 ただ電話なら万全という事はなく、
電話には電話なりの悩みがありました。

 タイミングが合わず留守電に折り返しの連絡をと言う
メッセージが残されていた場合です。

 その際にスマホからの着信履歴であれば
たぶん個人の携帯なので若干時間が経っていた場合でも
かけ直しても相談者本人が応答すると推測出来ます。

 これが固定電話の場合が問題なのです。
仮に自宅から、又は会社からの電話の場合ならば
タイミングによっては本人以外が応答するケースは容易に想像出来ます。

 他人に聞かれたくない相談だった場合、
こちらがいきなり「行政書士事務所のものです」と名乗れば
何か良からぬことの相談をしている?と勘繰られる可能性が
ないとは言い切れないのです。

 かといってこちらが名乗らなければ
ますます怪しいところからの電話が来たと
より変な想像をさせてしまうかもです。

 特に相談内容が離婚や相続といった微妙な個人の問題の場合
固定電話へのかけ直しにはかなり悩みます。

 可能な限り「返信はこちらでけっこうです」や
「今から言う携帯にかけ直して」「こちらからかけ直します」
等など、一言メッセージを残してくれるとその後の対応が楽になるのですが
こればかりは適当な解決策は未だ見出せていないのが現状です。

 その分、電話応対の場合には必ず折り返しの連絡の際の注意事項として
上記に挙げたような返信先や返信可能な時間帯、家族に内緒かどうか等
しつこく聞き出すようにしています。

 次に想定外の実績と言う面を紹介します。
以前から書いてきましたがブログやコラムで紹介した
私のプロフィールに注目しある意味安心感を覚えて
連絡を取ったというケースが意外なほど多かった事でしょうか?

 曰く、同世代でかつサラリーマン経験者なら
同じサラリーマンの今の自分の悩みをより深く分かってくれるかも?

 同世代の50を過ぎての第二の仕事に就いたことは
これからの自分に大いに参考になる。

 デスクワークしかしてこなかった人に
営業問題の相談をしても、果たして満足のいくアドバイスを
受けられるかどうか疑問。

 等など、自分から見ればどこにでもあるような
自身の経歴に関係する話にに強い関心が寄せられ
それがきっかけで相談を決めたという想定外の結果でした。

 さらに想定外中の想定外だったのが
出版関係やテレビ関係者からのアプローチでした。

 これも当時話題になり始めていた
「シニア世代のセカンドキャリア問題」に
たまたま50代の脱サラ行政書士と言う私の存在は
採り上げるには格好のネタ(当時はレアケース?)だったようで
いろいろなルートで該当する事例を探していた時に
まだまだ出来立ての未熟な私のブログやコラムを発見し、
取材の申し入れに繋がったのです。

 その結果、その後週刊誌や月刊誌や経済誌を始め
全国紙や夕刊紙からの依頼でコラム記事やコメント等を寄稿、
シニアを採り上げた単行本に一章を設けてもらって
長時間のインタビューを基にした特集記事迄掲載してもらいました。

 さらに不定期連載記事を依頼されることも少なくなく、
思わぬで副収入にも繋がりましたし、その記事がきっかけで
関東圏以外の遠方の相談者の獲得にも繋がりました。

 ここにも「自分と同じ世代での実体験」
「さらに同じシニア世代という気安さと信頼感?」
がかなり好結果に繋がったと思いました。

 

【タイミングの明暗】

 よく世間で言われることに
「生まれてくるのが遅すぎた」
「生まれてくるのが早過ぎた」
「時代がようやく追いついた」

等といったタイミングのミスマッチで失敗した事例や
商品、戦略、政策は枚挙に暇がありません。

 それらと比べれば私の事例など取るに足らないものですが
タイトルにした「出会い・運・営業力」がマッチした結果と思います。

 出会いで言えば同世代からの共鳴でしょうか?
如何に今まで自分たちの第二の人生について相談に足る存在が
身近にいなかったか? または同世代の実体験を聞ける機会がなかったか?

 巡り合わせ(出会いの運)と言う面では
マスコミに連続して採り上げられたことに尽きるでしょう。

 もし私より先にブログやHPで同様の仕事スタイルを公開した
誰かがいれば、そちらにアプローチしたでしょうし、
シニア世代の課題や問題がちょうど注目を浴びる直前と言う
タイミングだったこともやはり「運」であり巡り合わせでしょう。

 マスコミが第二の人生に注目するタイミングが
もっと遅かったら、私以上に魅力ある情報発信をする
同業者が数多く存在していたかもしれませんし、
その際には私の存在など見過ごされたのは間違いないことでしょう。

 タイミングの事例をもうひとつ紹介します。
 ~但しこれは成功例ではありません
 
 私の同世代や我々の親世代からの相談で
墓の問題や相続への備え、一人暮らしの不安といった
年齢とともに生じてきた諸問題が増えてきたときに
これらを総称するワンフレーズが出来ないかと考えました。

 ブログの構成や文章表現のアドバイス等、
色々お世話になっていた専門家の方々に相談したところ、
その主旨は良し!と言われました。
 それではと無い知恵を絞ってひねり出したのが、
実は「終活相談」と言うフレーズでした。

 今から15,6年前の話です。
当時は「死や老い」をメインにしたフレーズは皆無で
どちらかと言えば表立っての表現が避けられてきた分野でした。

 案の定相談した相手全てから「不適当」の返事、
ネットで「終活」を検索してもヒットしない状態で
まだまだ弱腰だった私は自分の案を葬り去りました。
~ほぼ100%「シュウカツ=就活でした」

 ですが今では「終活」の認知度は相当なものになり
至る所で目にするワードとなりました…
今さらの話ですが(負け犬の遠吠え?)
あそこで初志貫徹してブログやコラムで発信を続けていれば…
今となっては後悔しきりです。

 
 最後の営業力については重複する内容になりますが、
既存のスタイルを絶対と思わなかった事が第一歩でした。

 中年の、脱サラ・異業種からの参入の新参者が
既存の取扱業務を既存のスタイルで始めたところで
誰が注目するでしょう? 仕事を託そうとするでしょうか?

 今更業界の先達者の下でまた雇われの仕事をする気はなく
独りで仕事を成立させるには「隙間」を狙うしかありません。
たまたま私は相談者の悩みのひとつが相談者の自由時間と
こちら側の営業時間とのミスマッチと言う点に注目したことで
無駄な経費は販促費をかけることなく差別化に成功しました。

 

【成長分野への着目】

 営業力についてもう少し述べたいと思います。

 行政書士の業務の代表的なものとして
官公署への書類作成、提出・申請代行といった業務があります。
私の学生時代には運転免許試験場の周囲に行政書士事務所が
ひしめいていた記憶があります。

 しかしながら令和の時代、主な書類はコンビニで取得が可能になり
申請もパソコンから自分の都合のいいタイミングで行えるといった
カスタマーファーストなサービスがどんどん増えています。

 少子化、若者の免許取得者の減少などは
従来の業務の減少にも繋がります。

 言い方が微妙ですが、
少子化に対し、今や「多死」の時代です。
さらに非婚化の流れから「ひとり様の老後」も大きな問題となってます。

 さらに死は男女を問わず、年齢も問わずに訪れます、突然に。
であるならば、その時に備える仕組みや心構えを発信する仕事は
「需要が尽きるどころか、これからますます増加傾向になる」分野です。

 ちょうど50代半ばで起業・開業したおかげで今や60代後半になった
同世代シニア、会社時代の先輩、同僚、後輩に始まり学生時代の友人知人、
さらにはその両親や兄弟姉妹といった世代も終活相談のメイン層なのです。

 日本が今まで経験したことのない多死・高齢化社会、おひとり様社会に
どういう対応が適当か? 過去に学ぶ事例がない状況であればどうなるか?

 やはりこの手の分野に一歩でも半歩でも先に参入していれば
一気にその分野の先頭ランナーにもなれるのです。

 私が終活をテーマと考えたのもおひとり様のシニアだったからこそ
近い将来に迎えるリスクについて我が身の問題として捉えたからです。

 営業力には、営業スタイル、営業方針、営業対象など等、
いろいろな要素が絡み合っています。

 どこに新たな営業チャンスがあるのか?
 その獲得にはどういう営業スタイルで臨むべきか?
 営業の対象はどういう世代でどういうニーズを持った者か?

 突き詰めれば、このポイントさえ正確に把握していけば
出会いや運といったものは自然と後からついてくるような気がします。

 

 

【終わりに】

 最後にもうひとつ。
これから起業・開業を目指す方は「人間観察力」の鍛錬をお勧めします。

 元の同僚、学生時代からの友人、仕事で知り合った知人など等
いろいろな場面でいろいろな話題を語り合う機会があったはずです。
その時に、先方の言葉から嗜好や主義、悩みや怒りと言ったものは
少し相手への関心度を高めていれば自然に感じ取れることがあります。

 サラリーマン時代には取引先との世間話になった時の方が
本音や要望を口にするケースに何度も遭遇しました。

 相手ももしかすると、
無意識にではなく意図して「匂わせ」を
仕掛けてきたかもしれません。

 そういう点に気付けるかどうかで
先方からの信頼は高まりますし距離感は確実に縮まります。

 私が起業して間もない時に
向こうから連絡をくれたり、相談者を紹介してくれたのは
ほぼこういった関係を築くことが出来た方々でした。
年齢も男女も関係なく、中にはこちらとしてはそこまでの
仲ではなかったような方(失礼!)からも貴重な橋渡しを
して下さった例もあったのです。

 その繋がりからこれまで全く縁のなかった業種での
セミナー開催や大きな相談業務を託されたりしました。

 前項でも書いたように、
出会いや運と言うものは自分の行動の積み重ねで
どうとでもなるのではと考えています。

 少なくとも、起業・独立したのであれば
仕事は上から与えられるものではなく、
自分で生み出すものですから、公私のどちらの場面でも
観察眼と言うものは活かしておくべきです。

 それで気になった事象があれば今度は行動力、
営業力を駆使して仕事に結びつけること。

 以上が私の個人的起業体験から得た成功のカギ、
と言えるでしょうか?

 将来起業・独立を考えている皆さんにとって
一つでも参考になる項目があれば、幸いです。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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