オンラインで公正証書遺言作成!?

【はじめに】

 昨年2025年10月から公正証書遺言は
オンラインでリモート作成が可能になったことは
まだあまり広く浸透していないようです。

 ここでは主な変更点について
簡単に紹介していきたいと思います。

 

【主な変更点とメリット】

 まず、ネットだけで申請が出来るという事は
当事者が役場に出向く必要が無くなります。
高齢者の場合には外出が難しい、1人での外出は
出来ない等の問題を抱える方にとっては明らかに朗報です。

 高齢者でなくとも事故や病気で行動に支障がある方も
自宅で遺言書が作成出来る点は同じくメリットと言えるでしょう。

 ちなみに従来は上記のような方への対処法として
公証人が出張して対応するサービスがありました。
但しこの場合は出張交通費に加えて日当が発生しました。
4時間以内の出張で1万円の日当が、4時間を超える場合は
2万円が発生しました。

 また心身ともに健康であっても
最寄りの公証役場まで出向くのがひと苦労で
往復だけで一日がかりと言うような遠隔地に
居住する場合にも大きなメリットがあると言えるでしょう。

 この他相続人の人数や受け取る遺産額によって
作成料が変わりますし、遺産総額に応じて「遺言加算」が
発生するケースもありますがここでは省略します。

 

 具体的な手続きについては以下のようになります。
1)作成の申し込み
 今までは公証役場に当事者が出向きます。
 その際に公的な書類で本人確認を行います。

 これに対し今回の変更では申し込みはメールでも可能、
 本人確認は電子署名で行うこととなります。

2)遺言書の案文の作成、原本作成日程調整
 対面、メール、電話、郵送で行いますが
 この点は従来と変わりがないようです。

3)遺言原本の作成と保存
 今までは対面で行います。
 役場での対面から自宅や病院での対面、
 書面での作成と保存で本人、公証人、証人の
 署名と押印が必要となります。

 これに対し、新制度では
 一定の条件でWeb会議での作成が可能になり
 電子データでの作成、保存となります。
 また電子証明のみで押印は不要となります。

3)交付
 従来は公正証書遺言の正本と謄本を書面で交付でした
 今回からメールでの受信、CD-R等の記録媒体が
 書面の交付と共に選択肢に加わりました。

 

【課題】

 上記にあったWeb会議とは
まずは当事者からの利用の申し出があることが要件で
さらに公証人が個別の案件ごとに要件を踏まえて
開催が妥当と認めた場合に開催されます。

 具体的には先に述べたような居住地の問題で
出向くことが難しいかどうか、また本人の心身の状態から
会議開催が妥当かどうか、また本人の意思、判断能力に関して
医師の診断書による確認が出来るかどうかも該当します。

 さらには相続人が同席していないことの証明で
全方位を撮影することや証人と本人が同じ場所から参加することで
本人の意思に反した内容になっていないかを確認します。

 相続財産の配分に合理的な理由があるか
特定の相続人に偏った内容の場合そこに合理的な理由が
あるかどうかの確認も会議開催の案件となります。

 自宅でオンラインで手続きが可能と言っても
万全を期すためにはこのような別の案件をクリアすることとなります。

 私見ですが、今の60代であれば概ねこの様な様式の変化、
オンライン作業への対応もさほど困難ではないと思いますが、
70代後半から80代の方にとってはオンライン作業自体に
どこまで習熟できるかが大きな壁となるかもしれません。

 その結果、遺言書作成自体を諦めたり
公正証書から自筆証書遺言に切り替え、
内容の不備から遺言書が無効になることもあり得ます。

 せっかく利便性の向上を目指した今回の制度改正も
まだ課題が残されているかもしれません。

 

【終わりに】

 いかに「遺言書作成適齢期」の世代に
負担なく、手軽に作成を始めてもらえるか?
 

 今回の様式も改善の妙手であると思いますが、
今回参考にした日経新聞の記事の中には
パソコンやスマホで作成可能な「デジタル遺言」にも
言及していました。

 こちらは自筆証書遺言をデジタル化することを目指しており
いよいよ「自筆」の負荷を軽減する方向性を強めるようです。
今年中にも関連法案を提出とありましたので
具体的な内容が分かり次第また紹介したいと思います。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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