【はじめに】孤独・孤立問題について
さて今回は、
具体的な終活の説明に入る前に、
前回のブログでも触れていますが、
最近顕著になってきた「孤独と孤立」の現況を紹介します。
一般的に、
孤独は、主に主観的な感情によるもので
孤立は、他者との繋がりが乏しい客観的な状態を指すと言えます。
どちらの場合も基本的には、
家族以外に頼れる存在がいない場合に、
孤独・孤立になりやすいと言えるでしょう。
特におひとり様の場合、
終活への意欲が希薄な方が少なくないのですが、
そのような場合、孤独や孤立問題が一因だった
というケースが見受けられます。
なぜ終活に消極的、否定的なのか?
現代の孤独とはどういったものなのかを知ることも
間接的に終活の促進に関係するのではと思う次第です。
データでみる現在の孤独と孤立
では、まずは具体的なデータを紹介します。
2021年の内閣官房による
「人々のつながりに関する基礎調査」によりますと
「相談相手になる人がいない」という人の年代別の傾向を見てみると
30~59才のいわゆる現役世代で、
それぞれ10%台のひとが「いない」と答えており
なかでも30代が11,5%でトップでした。
同様に「孤独感がある」と答えたのも
30代未婚者で16%超でトップでした。
いわば社会の中核を担うはずの30代、
仕事にも慣れてきた頃の筈の30代でこういう傾向がある
という事実にまず驚きでした。
ひとり暮らしの単身世帯は2020年で4割に迫っており、
このまま推移すれば2040年には4割に達すると見込まれてます。
さらに、
2020年の50歳時における未婚率は
男性で28%超、女性で約18%で
これは統計以来過去最高だそうです。
ひとり暮らしだから、未婚だから、
全てが孤独・孤立に陥る訳ではありませんが
条件としては無視できないものかもしれません。
加えて、孤独死の割合でも20~50代の現役世代で39%、
これに今やほぼ現役世代と見做される60代を加えると
実に孤独死のうち70%に達するのです。
年代別では20代が4%、30代が6%とさすがに低い構成比ですが
40代が10%で2桁になり、50代が19%で、60代となると31%と
一気に跳ね上がります。
ここで言う孤独死は
「自宅内で死亡した事実が死後に判明した一人暮らしの人」
と定義されたものを指しています。
~「2021年の孤独死現状レポート」(日本少額短期保険協会調べ)
会社勤務でも生じる孤独と孤立
孤独死にまで至らなくとも、
会社勤めをしている会社員でも
孤独や孤立を感じるケースは少なくないようです。
その要因は、
やはりコロナ禍によって生じた仕事の進め方の変化でした。
リモートワークの推進による急速なデジタル化や、
それに伴う主にITスキルの修得の促進や高度化の流れは、
多くの50代以上にとってはついていけないものとなっています。
今までのように、
膝を突き合わせての商談や
社内外の根回しに長けたといった経験やスキルは、
リモート商談や会議の中では全く無用のもの扱いに。
とはいえ、
年下の部下に新しい仕事の進め方を尋ねる(教えを乞う?)のは
プライドが邪魔して出来ない、特に管理職として君臨してきた方は
よりその傾向が強いようです。
さらに彼ら世代を悩ませるのが、
コロナ終息後でも、今のようなリモートワークが常態化することが
ほぼ確実ということです。
さらに、
上場企業等では、大量採用された同期や同年代の社員が
揃って高齢化を迎えるといった別の問題も表面化しているようです。
入社時には出世争いの対象だった同期や2,3年差の先輩後輩と、
50を過ぎて再びの競争が始まるのです。
今度は会社に残れるかどうかの、生き残りのための争いとして。
その為には、
新しい仕事の進め方にいち早く順応しなくてはならず、
新たな専門知識やノウハウを人より早く、詳しく修得しなくてはいけない。
この状況を受け入れることになります。
ここでひとつの分岐点が出てきます。
あくまでも今の会社に、今の職場に固執するのであれば
上記したような「試練」を受け入れることになります。
反対に50代の在職期間内に副業を始めたり、
起業・独立の為の準備期間と考えるかです。
ここでも選択によって、60代以降の人生が左右されるのです。
コロナ禍での明暗
コロナ禍の影響は全てマイナスに生じているとも言えません。
ごく少数の事例ですが、
普通に行き来することが出来なくなったことで
遠距離に暮らす親や兄弟、子供との定期的な連絡、
イコール安否確認が活発化したのです。
手段としては電話連絡が多数のようですが、
中にはメールやlineでのやりとりも
以前と比べ密接に行うようになったという話も聞きます。
この結果として、
独居中の親族や老親の異変や、病気等の兆候に
いち早く気付くことに繋がり
大事に至る前に適切な処置が出来たというものです。
ですが、
日頃から疎遠な関係だった場合には条件は変わらず、
却って発見が遅れるということもあるようです。
ここでもおひとり様で親族や周囲との接点が少ない方は、
孤独死、死後の放置に陥るリスクは高いものになります。
社会に居場所を
孤独・孤立になりやすい方の場合、
別に用事はなくともふらりと立ち寄れるような場所を
持っていないケースが少なくありません。
もう昔の話になってしまいましたが、
以前は病院などの医療施設の待合室に、
毎日集まる高齢者の方々がいたことを
覚えている方は多いと思います。
中には全くの健康体にもかかわらず、
終日たむろしているといった剛の者もいたようです。
これ以外にも
公民館や集会場に自然発生的に集まるような
「意味も名分もない集まり」が
周囲との接点の役割を担っていました。
これも、このコロナ禍で
閉鎖や自粛の波の前に自然消滅しているようです。
最近では
「孤独死防止センター」等の施設が用意されていますが、
このような大仰な名称では却って出向くのに躊躇するのではと感じます。
人の心は単純ではありません。
あの人は孤独だからこの施設に来ていると周囲から見られたくない。
実際は誰もそうは思っていなくとも、
自分の気持ちが拒否反応を起こすことは珍しくないことです。
社会的孤立に注意
1)会話がない
例えば会社勤めの場合は
地元(住まい近辺)に接点がないまま、
会社内での接点だけで満足していたケースが目立っており、
退職等で会社を離れた途端、日常会話の相手がいなくなるのです。
自宅で終日過ごせば、妻との会話に限界が生じ、夫婦関係が悪化、
最悪なのは熟年離婚に至ったというケースもあるのです。
さらにこれが、おひとり様であれば…
会社を離れた途端に、終日無言の日々に陥る可能性も出てきます。
2)頼れる相手がいない
仮に事故や病気で買い物に行けなくなった。
粗大ごみ等の処理もままならない。
公私にわたる重要な問題の相談相手がいない。
身元保証人がいない。
ざっと見ても、上記したようなケースに遭遇した場合に
対処の方法がなく、ますます孤独感、孤立感、疎外感が生じます。
3)日常の居場所がない
先の2)以前の問題とも言えますが、
隣近所に顔見知りがいない、親戚もいない、
いたとしても遠方に居住しておりほぼ没交渉の関係。
これについては特に男性のおひとり様に多く見られる傾向です。
さらにこの場合、あまり年齢には関係がないようです。
20代30代でも周囲と隔絶し、孤立無援といった方も少なくありません。
出会えば立ち話が自然と出来る相手、
用事がなくとも連絡を取れる相手、
コミュニケーションが自然と出来る人から見れば
当たり前の関係なのですが、全員が同じということはないのです。
会話がなく、頼れる相手もなく、社会との接点もない…
上記のような状況に置かれると、
自己肯定感の低下、生きる意欲の欠如に直結するようです。
退職や失職、又は転職等で転居を強いられたことで、
近隣に知り合いがいなくなった場合、
相談相手もSOSの送信先も同時に喪われることになるのです。
加えて収入減や、収入が絶たれたとなれば、
より重大な事態を招くことになります。
【むすびに変えて】おひとり様の備え
ここまで紹介したように、
おひとり様の場合、家族は当てにならない、
といいますか、それ以前にいません。
そうなると、最大の繋がりはやはり仕事仲間となるのですが、
退職後も従来と同じ繋がりを維持出来るかどうか?
自分はそう望んでも、残念ながらこればかりは相手あってのものです。
ということは、退職後の人間関係の構築や交流の確保は
自分から動いて取り組む必要があります。
受け身で構えていても、誰も寄ってはこない!
という考えを、覚悟を持つべきです。
一番手っ取り早いのは、元の同僚を中心にしたOB会への参加です。
会自体がまだ無いのであれば自らが率先して開催を目指すのです。
ひとりではどうもというのであれば、
気の合う同期や同僚に声をかけて共同幹事で取り組むのです。
取り組みの時点で既にいろいろなやりとりが発生します。
そこから自然と社会や人間との接点や繋がりが生じてきます。
社外の人脈であれば、趣味のサークルや同好会への参加や
主催も同様に孤立・孤独を避けられます。
一見すればつまらないことでも、
役割としてかかわることは重要な意味を持ちます。
それ以外にも、
地域の支援サービスや社会福祉協議会等にも自ら出向くことです。
悩みや弱みを相談すること、イコール他人に頼ることです。
これを恥と思わず、躊躇しないことです。
いい歳をしてこんな相談を他人に出来るか!
一人で何とかする!
といった見栄は何の解決にもつながりません。
人との繋がりを持つことは、
終活に関心を持つことに繋がります。
このブログのメインテーマである
おひとり様の終活を実践してもらう為にも、
孤独や孤立への備えを予め考えること。
おひとり様には真剣に取り組んで欲しいのです。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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