【はじめに】
せん妄と言う言葉は何となく認識はしていても
実際はどのような症状なのかを理解出来るのは
病院関係者を除けば体験した方以外はピンと来ないかもしれません。
多くの場合、
60代以上の高齢者が急な入院を経験した際に発症するようですが
私が父の担当医に聞いたところでは年齢の線引きはないとのことでした。
人によっては40代50代の働き盛りでも可能性はあるとのことでした。
今回はあまり認知されていない「せん妄の症状」について
実例を交えて紹介したいと思います。
【具体的な事例】
冒頭に書いたように発症に年齢は関係ないようですが
一般的には元気だった高齢者が転倒事等で緊急入院した際に
住環境の激変や自分が入院したことを十分理解出来ない
こういった場合等に混乱状態を発してしまうとのことでした。
同じ年齢で、同じような状態で入院しても
殆ど発症しないケースもあるそうです。
この辺りも個人差が関係しているようでした。
また、発症してもその症状や度合いも個人差があるそうです。
その中から代表的な症例を以下に紹介します。
1)乱暴な言葉使い
健康時には家族にも丁寧な言葉使いだった父親が
医師や看護師、自治体からの障害認定に派遣されたスタッフに
突然暴言を浴びせかけるというものです。
具合の確認や障害認定の為の聞き取りを行う場合、
麻酔や緩和剤等で意識混濁の状態では正確な情報を得にくく、
ある程度覚醒状態にして作業を行うようですが
その際に暴言や暴力行為(腕の点滴を抜く、テーブルのものを投げる
等の症状迄)を起こします。
2)問題行動
家族との連絡の為にと病院に内緒でスマホを持たせたところ
自分が拉致、誘拐されたといいった被害妄想気味になり
意味不明な電話を時間に関係なく家族にかけたり
最悪だった事例では完全に誘拐されたと信じ込み警察に救助を
求めたという事例があるそうです。
他にも病室から勝手にデリバリーに発注し
今は空き家となっている自宅に届けさせた。
さらには病院に届けさせたものの食事制限のものばかりで
無駄にしてしまい、病院スタッフにも負荷をかけた事例。
より深刻だったのが部屋のサイズに全く適していない
大型テレビや書棚を勝手にネットでオーダーした事例等。
このような想定外の使用を行ったことで
介護施設は相当な負担を強いられたとのことで
私が聞き取りをした施設では完全にスマホを
病院預かりとする、又は家族に返却するように
しているとの事でした。
家族からすれば、何時でも連絡が出来る、
また当人が寂しくないようにと気を遣ったことが
却ってトラブルの発生源となってしまったようです。
3)被害妄想
お隣さんや親しくしていた地域の知り合いを敵視しだす。
ある日いきなり特定の人物だけに不信感を持ち敵視するのです。
~中には実の娘を不審者としてナースコールした例など
これも被害妄想の事例のひとつですが
30年来の近所の茶飲み友達を、唐突に
「彼はもう3年前に死んでいる」
「昨日顔を出してきたのはいったい誰だ?」
「間違いなく俺の財産を狙っているんだ」
など等を口にし始め、多くはそのまま信じ込んでしまい
家族や他の友人がいくら言っても考えを変えない。
名指しされた友人の悲しみもさることながら
家族や他の友人からしても自分たちのことも
いつかああいった見方をされるのではと
やるせない気持ちになるのです。
4)妄想と現実の混濁
実際は1週間ぶりの面会なのに
「昨日も来てくれたのに悪いね」
逆に2日に1回のペースで顔を出しているのに
「久しぶりだな、仕事は忙しいのか?」というものや
何年も前から存在する隣家の事を
「隣の家はもう完成したのかな?」など等
もはや対応困難な会話を始めるものもありました。
痛みの緩和などの理由で
睡眠導入剤を継続して使用すると
昼夜逆転の生活になってしまい
目覚めると深夜と言う状況にパニックに陥り
夜中に何度もナースコールを押し始めた事例もあったそうです。
この結果、夜も昼も睡眠導入剤の影響で
終日うつらうつら状態が常態化してしまい
問題行動は減少するものの、気力の喪失で
周囲に無関心になっていく、さらに終日寝たきりになり、
最期は認知症を発症と言った負のスパイラルとなる。
5)気力喪失
これは正確にはせん妄とは違うと思いますが、
先に書いたようにせん妄によって生じるものと考えれば
これもせん妄の症例と言えるのではないでしょうか?
多くの場合、せん妄は一過性である期間を過ぎると
暴言や問題行動を起こさなくなるそうです。
ただ比較的平穏な状態に戻った時点で、
今の自分の置かれた状況を改めて自覚することで
もうだめだ、自宅には帰れない、元の生活は望めない
何でこんなことに、こんなはずじゃなかった…
どんどん気持ちが沈んでいき、それまで生きがいだった
趣味(読書や音楽鑑賞)にも興味を示さなくなり
極端な例では顔つきが一変してしまう事もあるようです。
【私の父親の場合】
かくいう私自身、父のせん妄状態を部分的ですが経験しました。
一昨年玄関先で転倒し肩と腰を強打し、即緊急搬送され治療を受けました。
頭は打っておらず検査の結果その日のうちに帰宅出来たのですが
翌々日に激痛を発し再び搬送され圧迫骨折が判明し即入院となりました。
入院直後の3日間は全く正常で言動もしっかりしていたのですが
担当医からは「年齢的にもせん妄発症は覚悟して下さい」と
早々と釘を刺されました。
医師の予言?通りに4日目からせん妄を発症したのです。
前段で紹介したような「絵に描いたような症状」で
かなりスタッフの手を煩わせたそうですが最後まで
私には詳しい(問題行動)は教えてくれませんでした。
当時は未だコロナ禍の影響から病院内は厳戒態勢で
入院先の病院は面会は1日1回、面会は同時に2人まで、
面会時間は15分(!)厳守というかなり厳しめの体制でした。
この厳しい制約の中での面会はかなりのストレスでした。
自宅からはクルマで片道2時間でしたので頑張っても週2回が
限度でした。
ですがやっとこさ病院に到着し面会許可を求め
面会時間が来てもその時に父はクスリの影響で爆睡、
そもまま時間切れで往復4時間は無駄となるケースが
多々ありました。
反面その為に
せん妄の状態を見る機会が殆どなかったのも事実でした。
父のせん妄状態のピークは約1か月続き、
その間は相続関連の話はおろか世間話も出来ず
具合を尋ねても意味不明な答えが返って来るだけでした。
私自身が遭遇した父のせん妄の状態は
介護認定の為、市のスタッフと同席して朦朧状態の父を
無理に起こして聞き取りを行った際、「誰だお前は!」
「なんでここにいるんだ!」「うるさい、話したくない!」
等と言った無理やり起こされたことの不機嫌からか自宅では
聞いたことのない乱暴な口調を耳にしました。
あと経験した事例としては2週間ぶりの面会時に
「午前中に来たのに、また来たのか、何かあったか?」
と不思議そうに尋ねられたことくらいでした。
入院してほぼ1か月後に医師からはそれまでの経緯から
「せん妄の時期を越えたとしてもおそらくこのまま寝たきり
そのまま認知症の発症を覚悟して下さい。」と言われ、
いよいよ覚悟する時期が来たかと思ってたのですが…
その後医師も驚くほどの回復を見せて2か月経過した時点で
完全にせん妄を脱し、正常な意識、判断力が復活したのです!
自分でベッドから車いすへの移動も出来る様になり
日中は談話室に出向き読書や日記をつけることも出来る様になりました。
既に健常な頃にある程度の相続手続きに欠かせない情報は
聞き取りを済ませ、入院時にはより具体的な情報の聞き取りも
出来ていたのですが、回復後も入院前と変わりない記憶力で
いろいろ追加情報の聞き取りも出来たのです。
介護施設へ入所が決まり退院の際には
担当医から「ここまで原状回復した例は私は見たことないです」
とまで言われました。 非常にレアケースだったのです。
ただ、影響がすべて解消ではありませんで、
最期まで何故この病院に搬送されたかを理解出来ないままで
転倒時から入院までの3日間の記憶はほぼ消えていました。
(転倒後に連絡を受けた私が病院に駆け付けたことも忘れてました)
せん妄でスタッフに暴言暴行をしたことも全く覚えていませんでした。
(病院スタッフから聞けた程度の乱行すら認めませんでした)
年齢的なものかもしれませんが、
事前に話してくれていた相続関連の情報をその後何回も口にする等
物忘れの症状も発していましたがこれは別の問題かもしれません。
その後病院へお礼を兼ねて挨拶に出向いた際に
せん妄を発症した患者のあまりの暴言に見舞いに来た
家族がさすがに激高しその後見舞いに来なくなった事例や
50年来の友人を詐欺師扱いした為、絶縁された等の
哀しい結末の話を聞ける機会があり、自身が経験した
事例との格差に驚かされたものでした。
【終わりに】
どうもせん妄から回復した場合、私の父のように
せん妄時の行動や暴言を全く覚えてなく
「本当にそんなことを言ったのか?」
「全く覚えがない」を口にするそうです。
ただ、医師の話では
中には記憶しているケースもあり、自覚しているからこそ
事実を認めたくない、知らないふりを決め込む?
こともないわけではないですと言われたので
私の父も実際はどうだったのか、考えてしまいました。
冒頭に書いた通り、頭部のけがを除けば
多くの場合入院して1週間前後(早い人は翌日から)から
症状が出始めるそうです。
それは逆に言えば
それまでは痛みに耐えながらも正常な判断力は
有している訳です。
せめて痛みが緩和してから
個人情報や相続に関する確認をと思うのは
子や配偶者からすれば当然の感情ではありますが、
せん妄発症後はどうしようもありません。
さらに担当医から言われたように
そのまま認知症を発症してしまえば
相続関連の話や聞き取りなど、全く不可能になります。
そうなってからでは後は成年後見の利用に頼らざるを得ません。
冒頭でも触れましたが
それまで心身健康、ひとりで何でも出来る方ほど
身動きできず、痛みに苛まれ、未知の場所にひとり置かれる…
こういった環境の変化の前に理解が追い付かずに
せん妄を発症するのです。
ここでも「先憂後楽」の考えで
元気なうちに「その時に」備えることの意義を理解して欲しいのです。
緊急入院し重傷の身ながら意識がある時に
相続関連の聞き取りをするのはせん妄前の危機回避と
自分では割り切れても傍からどう見られるかは別の問題です。
そんな場面を避けたいのであれば
やはり元気なうちの情報入手と共有を図っておくべきなのです。
この記事の著者

- 寺田淳行政書士事務所 代表
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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