【はじめに】
いきなりですが物事には相性というものが必ず存在します。
今の仕事に就いてからいろいろな相談を受けてきましたが、
相続でも、終活でも、起業・独立でも
突き詰めた結果、課題は相性だったというケース、
数多く遭遇してきました。
今日はそんな事例をランダムに紹介したいと思います。
【相続手続きの場合】
相続発生後の煩雑な各種手続きは
経験者であれば必ずその時の苦労譚を口にします。
突然の別れの場合は当然として
遺言を遺せたような場合であっても
葬儀を終えてからの手続きに苦労しないことは
まずあり得ません。
相続人が一人の場合は相続問題は発生しませんが
全ての手続きや手配を一人でこなすという苦労が生じます。
複数の相続人がいれば争族の恐れがありますが
各種の手続きや必要な資料収集は分担出来れば
個人にかかる負荷は軽減されます。
相続の場合は発生から10か月以内の申告と相続税の納付という
タイムリミットが課せられています。
よく相続マニュアル的な手引書では
「手続きが面倒なもの~不動産名義変更等を先に片付けよう」
「簡単なものから効率的に片づけて最後に難問を片付けよう」
共に、効率よく期限内に手続きを終えることが目的としています。
前者のやり方を選択しがちなのが
生真面目、困難なものから先に手を付けるタイプの方です。
見事に問題解決が叶えば一気に残る簡単な手続きを片付けて
一件落着となるのですが、最初の課題に躓くと大変です。
時間が限られているから他の課題を先にやっておくべきか?
ここまで時間を費やしたのだからやはり解決まで徹底すべきか?
私がよく例として採り上げるのは受験時の問題との向き合い方です。
ここでも前半の問題の中に難問があった場合、
絶対に「順番に」問題を片付けて次に行く、と拘るタイプと
回答する問題数を稼ぐべくいったん保留にして次の問題に向かうタイプ、
に分かれますが、紹介した事例の方は見事に前者のタイプでした。
極端に言えば、答えられない問題を残すことが許せない、
他の問題を解く時間が無くなってもこの問題だけは解く!
これでは目的と目標が取っ散らかってしまいます。
受験であればまずは解答を一問でも多くして
合格を勝ち取ることが最終目的のはずです。
相続の場合なら、期限内に滞りなく申告を済ませ
納付を行うことのはずです。
共にタイムリミットのある課題ですから
簡単な課題であっても時間が切迫してくれば
初歩的なミスを起こしがちです。
特におひとり様で相続手続きを行う場合は
効率的な対応を考えておかないといけません。
ほとんどの方にとっては「最初で最後」の
手続となる相続手続きですから、比較的簡単な手続きを
確実にこなすことで実績を積み、達成感を得ることで
次のレベルの手続きにも自信と余裕を持って臨めます。
優先すべきは、時間内の業務完遂です。
【起業・独立の場合】
次は起業・独立の場合にあった事例です。
脱サラを目指して起業・独立を目指す場合に
目指す仕事に必要な知識を伸ばし
必要な技術を高める為に
受講したり資格取得を図ることで
ある程度のレベルまでに到達することは可能です。
ですが、目指す仕事との相性は
このような努力で得られるものではないのではと
私は思っています。
全てとは言いませんが、
なぜこの仕事で起業を?と質していくと
憧れの先輩が成功した仕事に自分も後に続きたいとか
今大流行の仕事で成功者として社会に認知されたいといった
外部からの刺激だけでその仕事を目指したというケースでした。
本当にその仕事に就きたいのか、
好きなのはその仕事自体なのか、
その仕事に付随する名声や生活の安定なのか?
遺憾ながらこの点があやふやな人ほど
起業・独立に向けての努力の途中で壁にぶつかるようです。
終活でも仕事でも結局のところ最初の一歩を踏み違えると
なかなか軌道修正が出来ないのが実態のようです。
【終活の場合】
60代を迎え、健康面に不安を覚えた場合に
そろそろ終活に手を付けてもと思う方は少なくありません。
終活を真剣に考えるきっかけの一つが
相続の発生による手続きの面倒さであることは
多くの方が口にします。
相続発生後の各種手続きや申告などの場合、
相続人が複数いるのであればそれぞれが分担することで
相続人調査や財産調査、不動産の名義変更から
金融機関での手続きを効率よく進めることが可能でしょう。
不明な点や必要な資料集めも何人かで分担出来れば
個人にかかる負担は相対的に軽減されます。
ですが、相続人が一人だった場合は?
遠隔地であろうが別居して何十年ぶりの実家の調査であろうが
期限内に全てをこなさなければいけないのです。
時間的にも費用的にも労力的にもすべて一人でこなすのです。
複数人にせよ一人にせよ、
こういう経験をすると、自分の場合にはこんな面倒は
遺された家族や周囲に負わせたくないと思うのも普通でしょう。
この様な背景から自分の終活を決意したものの
実際に作業を開始する時点で何から手を付けるべきかで悩み、
次に始めたもののなかなかはかどらないまま意欲を失くすといった
状況となり相談に来られる方もいました。
以前から紹介していますが
終活にはいろいろな問題に対処しなくてはいけません。
個々の事情も異なることからそれぞれケースバイケースで
事に臨むこととなるのでよけい万人に通じる回答は
得られ難い物となっています。
それを踏まえたうえで大雑把な括りを言えば、
自分しか知っていない情報は何か、
第三者に伝えておかないともしもの際に手続きが進められないものは何か
自分自身が知っておかないと肝心の終活が出来ないものとは何か
まとめてしまえば
まずは自分情報の棚卸と第三者に迷惑をかけない為の情報の整理、
これらは意外に時間がかかるものです。
ですが、先に紹介した相続や起業などに比べれば
終活には基本的にタイムリミットはありませんし
決めるのは自分自身で出来る点が大きな違いです。
ここでも、まずはやりやすい終活から手を付ける事、
ひとつの終活をこなせば自信に繋がりますし、
次の終活の完遂への追い風ともなります。
やる順番もやり方も全て自分の裁量で決められる。
必ずこれから解決と言った固定観念を捨てることで
終活自体を楽しむような気持になればこっちのものです。
【終わりに】
今回取り上げた問題の相談に来られた方に共通するのは
非常に生真面目で順序だてて物事に対処するのが癖になっている
と言う点でした。
終活は第一にこれをしなくてはいけない
これから片付けておけば後から楽になります
優先順位を決めたらそれを遵守する方が結局効率的です
など等、いわゆる手引きやアドバイスを謳う書籍などには
終活初心者は全てかくあるべしというものが見受けられます。
ですがあまりこういった先達の声に縛られないようにして下さい。
人にはそれぞれ得手不得手、とっつきやすいこともとっつきにくいものも
必ず存在しています。 10人中9人が易しいと感じても自分には
難物と言う問題は必ずあるのです。あって当たり前なのです。
不思議なもので相性がいい問題は解決に向けてどんどん考えがまとまり
その為の行動をすることがある意味楽しいものになります。
この逆に相性が悪い(苦手な)問題だった場合は
まず意欲が湧きません、義務的にこれをこなさなければという
ネガティブな気持ちが払拭できないまま不承不承対処する為
なかなか手続きが進みません。
まずは第一にこの問題を解決しておかなければ
これさえ片づければあとは楽なのに!
と思えば思う程、肝心の問題解決のめどが立たなくなります。
結局時間だけが空費されるだけで何ら成果が出ない。
最悪なのは終活挫折となり、いずれまたと言う形で先送り。
これでは貴重な時間と労力を無駄にしただけです。
話を戻して、
終活を途中で挫折させないためにはどうすればいいか?
やりやすいことから片付けるだけです。
どんな内容にせよ、完遂すれば気分はいいものですし
達成感が生じてきます。次にまたこれを先に片付けたいと思うものに
取り組めば、次の達成感を得る確率はより高いものとなります。
ここでもどうも手間がかかる、あまり乗り気でなくなったと
当初の感触が変わったと感じたらすっぱりと保留にするのです。
前述しましたが遺産相続の手続きとは違い
終活の準備には明確なタイムリミットは
ありません(突発的なアクシデントは別として)
自分が思い描いた終活の項目は
自分のやりやすい方法で手を付ければいいだけで
着実に課題の解決を積み重ねることが
最終的には満足のいく終活となるのです。
とりとめのない話になりましたが、
急がば回れ、柔軟に事に臨む姿勢こそが
争族、起業・独立、そして終活にとって
不可欠なものなのです。
この記事の著者

- 寺田淳行政書士事務所 代表
-
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
■フェイスブックページ「50歳からの人生設計相談室」
■ブログ「新・先憂後楽」
■コラム「マイベストプロ東京」
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