【はじめに】
最近は専門誌に限らず週刊誌でも
死後手続きについての特集がよく組まれていますね。
いざ親が、兄弟が亡くなった時、
何をいつまでに手続きすべきか?
どうしても関心は「相続」「相続税」「申告と納付」
といった10か月後の課題に意識が偏ります。
ですがその前に、いろいろな届出や申請、提出作業が
期限付きで待ち構えているのです。
ここでは、死後3か月以内(実際は1ヶ月以内が主ですが)
の期限のものに絞って簡単に時系列に沿って説明したいと思います。
なお事例としては、
入院していた病院で亡くなった場合としています。
【死後1週間以内に手続きをする】
故人を偲ぶ暇もなく、やるべきことがあります。
要は火葬場で最後のお別れまでの業務です。
1)死亡診断書を入手
まずは入院していた病院の
看取った医師からこれを受け取る事がスタートになります。
この後いろいろなところで必要になるので
コピーを複数枚取っておく事を忘れないように。
受け取る際には相続人の印鑑が必要になります。
故人の暮らしていた自治体の窓口に届け出ます。
2)死亡届を提出
自治体の窓口では死亡診断書とセットになっている
「死亡届」に必要事項を記入して一緒に提出します。
3)火葬許可申請書を提出
この時に同時に「火葬の許可」の為に必要な
申請書を提出します。
なので窓口では死亡診断書、死亡届、火葬許可申請書を
同時に提出することになります。
4)火葬許可証を受け取る
提出した書類に不備がなければ、
「火災許可証」が発行されます。
火葬許可証はこの後火葬する火葬場に提出するので
大切に保管しておきましょう。
まずは、ここまでが自治体の窓口で早急に済ませるべき手続きです。
5)埋葬許可証を火葬場で入手する
火葬の後に骨壺と一緒に火葬場でこれを受け取ります。
これがないと埋葬することが出来ません!
予め決めておいた寺や納骨堂に埋葬許可証を提出し
埋葬手続きに入ることとなります。
なお、納骨に関しては期限はありません。
とりあえず骨箱に納めて自宅での手元安置として
じっくりと寺や霊園などを見極めることも可能です。
既に家族の墓等を契約済みであれば、
先方との打ち合わせで納骨の日取りを決めることになります。
ここまでが、「死亡後7日以内に行う」ことになります。
ただ実際には上記だけを行えば良いわけでもありません。
同時並行で、葬儀の形をどうするか? 一般葬? 家族葬? 直葬?
一般葬ならば誰に訃報を連絡するか?
喪中はがきを出す相手は誰か? など等、
気になる案件は山積みです。
可能であれば、
予め葬儀の型式や喪中連絡の対象範囲などは
決めておくとかなりの時間と労力の節減に繋がります。
納骨先が寺であれば、
戒名を生前に相談しておいてもいいでしょう。
ある意味冷酷に見えますが、
事前に寺に万が一の際の連絡や手順を聞いておく、
提携している葬儀社があれば、24時間対応かどうかの確認や
入院先までの引取りも可能かといった実務面のすり合わせも
しておくことでその時を迎えた時に狼狽することなく
恙なく引取りから安置までが可能になります。
【14日以内に手続きをする】
1)場合によっては世帯主の変更届をする
故人が世帯主の場合のみですが、
故人が暮らしていた市区町村役場に
届出人の本人確認書類と印鑑持参で手続きします。
もし加入していたら国民健康保険証も必要になります。
2)健康保険の資格喪失手続きをする
各健保組合に故人の保険証を返却します。
但し、国民健康保険の場合は期限が5日以内なので要注意!
故人の健康保険証、死亡診断書の写し、世帯主の印鑑が必要です。
勤務先や故人の暮らしていた市区町村役場で手続きをします。
3)介護保険の資格喪失手続きをする
故人が介護保険を受給していたら
介護保険被保険者証の返却も行います。
故人の介護保険証、介護保険資格取得・異動・喪失届を
故人の暮らしていた市区町村役場に提出します。
4)年金受給権者死亡届を提出する
故人が年金受給者であれば、
国民年金は14日以内に、厚生年金は10日以内に届け出をします。
ただマイナンバーカードを保有し、かつ連携していたら
死亡届を提出した時点で自動的に受給停止になります。
マイナンバーカードとの紐付けの確認を事前にしておきましょう。
故意は論外ですが、故意でなくても、年金受給を停止しなければ、
不正受給と見做される場合があります。
必ず期限内に手続きしたいものです。
故人の年金証書、死亡診断書の写し、戸籍謄本、住民票の写し
預金通帳が必要となります。
こちらの手続きは年金事務所、年金相談センターとなります。
5)未支給年金請求書を提出する
先の受給停止の手続きと同じく
年金の未支給分があれば、請求が出来ます。
ただこれには時効があります!
5年で時効になるので早急に確認したほうがいいでしょう。
手続きには故人の年金証書、死亡診断書の写し、
戸籍謄本、住民票の写し、預金通帳が必要となります。
こちらも年金事務所、年金相談センターが窓口になります。
【1か月以内に手続きをする】
最も手続きが集中するのが、この期間です。
以下に順不同で紹介していきます。
1)公共料金の名義変更や解約をする
電気、ガス、水道ですね、
故人がひとり暮らしでその後誰も住む予定がないのであれば、
解約手続きになりますし、同居中で契約者が故人であれば
名義変更をすることになります。
検針票や領収証などから連絡先を確認しておくと
この手続きもスムースに進めることが出来ます。
ただやみくもに手続きを進めるのは考えものです。
空き家になった実家の場合、早々に水道や電気を解約すれば
後に自宅整理で室内作業をする際にトイレが使えない、
水が出ない、電気が点かないでは家財整理どころではないはずです。
今のような炎暑の時期や、極寒の季節になれば
その苦労は言うまでもないことでしょう。
2)各種のカードの解約をする
クレジットカードはローン契約等の残債の有無を
確認する必要があります、なければ早々に解約手続きを。
会員の種類、グレードによっては
安くはない年会費が自動的に引落とされます、
無駄な出費を防ぐためにも
カード会社の連絡先は事前に把握しておきましょう。
3)銀行口座の解約をする
故人名義の口座は死後凍結されています。
ある意味最も早く手続きをすべきかもしれません?
各金融機関の担当窓口で手続きを行いますが、
個々の定めがあるのでこれも事前に手続きに必須の書類や
証明書など、必ず聞き出しておきましょう。
概ね必ず必要とされるものは、
遺言書、遺産分割協議書、
故人と相続人全員の戸籍謄本、
相続人全員の印鑑証明書
といったところです。
4)携帯電話の解約をする
長く携帯を使用していた場合は
携帯のアドレス帳から訃報連絡したい相手の電話番号が
判明したり、メモ機能の中に各種のIDやパスワードを
一覧で書き込んであった例があります。
さらにはネット証券の取引内容等もスマホ内にしか記録されてない、
など等、人によっては重要な情報の宝庫というケースもあります。
長く放置すれば無駄に基本料だけが発生しますが
中身の(情報の)精査だけは済ませておきたいものです。
ここまでに事項は、期限や時効はありません。
以下の事項には時効が設定されてますので注意が必要です!
5)死亡一時金の申請をする
遺族年金受給条件に該当しない人が申請します。
詳細は年金事務所に確認をお願いします。
6)高額療養費の払戻し申請をする
亡くなるまでに発生した医療費の
上限額以上の分を払い戻すものです。
高額療養費支給申請書、医療機関での領収書、
戸籍謄本等を用意して故人の暮らしていた自治体窓口へ。
これも詳細は各自治体に確認をして下さい。
7)高額介護サービス費の払戻し申請をする
これは介護保険料の限度額を超えた部分の
払戻しの請求が出来ます。
介護保険給付費の支給申請及び受領に関する申立書
領収書が必要になります。
これも故人が暮らしていた自治体が窓口です。
8)葬祭費を申請する
健康保険加入であれば、一定額の葬祭費(埋葬料)が
故人が暮らしていた自治体か加入していた健保組合から。
故人の健康保険証、申請者の本人確認資料、
埋葬にかかった費用のわかる領収書などが必要です。
ここまでが、時効2年となっています!
9)生命保険の受給を申請する
民間の生命保険の死亡保険金を受け取る手続きです。
窓口は当該の保険会社で必要な書類等は
各保険会社に確認が必要です。
概ね死亡診断書の写し、保険金受取人の身分確認が出来る書類等は
必須ですが会社によってはこれ以外に必要なものがある場合があります。
この時効は3年となっています
※稀に契約者本人が家族に加入している保険を伝え忘れている、
あえて伏せていたというケースもありますので、情報収集には
注意を要します。
10)遺族年金を請求する
世帯主を亡くし、受給条件を満たす遺族が対象となります。
年金請求書、故人と請求者の年金手帳、
死亡診断書の写し、戸籍謄本、請求者の所得証明書等
故人が暮らしていた自治体か年金事務所で
詳細について確認をして下さい。
11)寡婦年金を請求する
条件を満たした夫が年金を受給出来ずに死亡した場合に
妻が代わりに受け取れるというものです。
ケースによって必要な書類は変わりますが、
全ての場合で必要になるものは
戸籍謄本、基礎年金番号通知書、世帯全員の住民票の写し
死亡者の住民票の除票、年金証書、請求者の収入が証明出来る書類
受取先金融機関の通帳などです。
提出先は先の遺族年金と同じく
故人が暮らしていた自治体か年金事務所等となります。
この2つは時効が5年とされています。
10)と11)を除いた9項目はほぼすべてのケースで必要な手続きです。
30日間で9つの作業を片付ける、最も忙しい時期となるのは
やはり死後1か月以内のこの時期だと思われます。
【3か月以内に手続きをする】
1)遺言書を検認する
相続人全員で開封し、検認します
ただ、自筆証書遺言を法務局に保管していれば不要です。
遺言書検認申立書、故人の出生から死亡迄の全ての戸籍謄本、
相続人全員の戸籍謄本が必要です。
家裁に提出します。
2)相続人調査、相続財産調査をします
故人の相続人は誰か、何名いるのか?
遺産の内容はどういったものがあるか等を調べます。
遺産によって窓口は変わります。
各金融機関、保険各社、証券会社、不動産関連、
各自治体も大将となる場合もあります。
これも被相続人が元気なうちに情報共有が出来ていれば
かなりの時間と労力の削減が図れます。
3)相続放棄申述書を提出します
いわゆる「相続放棄」の手続きです。
提出先は家裁で故人の出生から死亡迄の全ての戸籍謄本と
相続人全員の戸籍謄本等が求められます。
負債の方が多いような遺産だった場合に
相続放棄することでマイナス財産を受け取らずに済みます。
こうならない為に前項にある相続財産調査が重要になってきます。
【終わりに】
ここまでの手続きの殆どを
ほぼ1か月以内に恙なくこなさないといけないのです、
時間と労力を最大限に費やすことになって当然です。
さらに途中でも書きましたが、
手を付ける順番をしっかり確認、整理しておきませんと
二度手間や全てやり直しと言った無駄な努力にもなり兼ねません。
改めて書き出してみると事前情報の有無が、
どれだけ手続きの手間を軽減させるかが
認識出来たのではないでしょうか?
これ以外にも、期限は特にありませんが
故人の運転免許証やパスポートの返却もしなくてはいけません。
期限も罰則もありませんが、やはり一連の手続きとして
無視しないで済ませておきたいものです。
また相続手続きに有効な「法定相続情報一覧図」の
写しを交付しておくのも出来れば早い段階の方がいいでしょう。
簡単に言えば相続人の戸籍関係を一括したもので
ここでは詳細は書きませんが、最初の手続きを済ませておけば
将来の相続関連の手続きに大いに役立ちます。
故人の住民票除票、相続関係を証明する戸籍に関する書類一式を
最初は用意しておく必要があります。
窓口は法務局になりますので詳細は直接確認して下さい。
期限が3か月を越えますが、
故人が400万円以上の公的年金での収入があった場合
確定申告が必要だった場合は、亡くなるまでのその年の
所得税を計算して確定申告をしなくてはいけません。
故人の確定申告書や給与、年金の源泉徴収票、
医療費の領収書等から作成し、申告します。
故人の暮らしていた地の税務署が窓口なので
遠方に暮らしていた場合はそれなりの手間がかかります。
ですが納税をしませんと延滞税が課せられるので
故人(親、兄等)の収入についての情報は把握しておきたいものです。
3か月経過後には若干のブランクを経て
手続きの本丸ともいえる相続税の申告と納付を10か月以内に、
さらに不動産の名義変更(今年の4月から義務化されました)
を3年以内に行うように定められています。
まずは3か月以内の手続きを円滑に進めることを目指し、
そのためにも今のうちから出来る準備は始めることで
相続発生後3年間の多様な義務手続きに余裕を持って取り組みたいものですね。
この記事の著者
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東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。
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