おひとり様の遺産の行方

【はじめに】

 先日の日経新聞にも掲載されていましたが
今回は相続人のいない遺産の問題について
簡単に紹介したいと思います。 

 

【遺された財産の行方】

 最高裁のデータによりますと
相続人不在による国庫に入る遺産は2023年度で1015億5027万円
この手の記録が残っている2013年度以降では最高額となったとあります。

 前年度との比較では240億円以上の増加となっており、
2013年度の3倍の額に達しているそうです。

 他人事ではありませんが、私のような独身の一人っ子を始め
子のいない夫婦で配偶者に先立たれた方や何らかの事情で親族と
絶縁となっている方などが増加していることは否定出来ません。

 こういう傾向によって
相続人の有無、債権者の有無を確認し、
未払い債務を清算するといった遺産が国庫に入るまでの手続きをする
「相続財産清算人の選任申立」も増加しているとのことでした。

 さて国庫に納められた後の遺産はどのように使われるのでしょうか?
実は明確な規定はなく当然ながら遺産の持ち主であった故人の意向等は
全く反映はされません。

 おひとり様の遺産の場合であれば
上記のような手続きで国庫に収まりますが
仮におひとり様でなくれっきとした相続人がいる場合には
相続人間での遺産の押し付け合いによって
別のトラブルを招く可能性が出てきます。

 特に遺された兄弟姉妹と生前険悪な関係であったり
会ったこともないような親族だけといった場合は
「争族や争続」の問題が生じます。

 欲しくもない田舎の実家や手続きする価値もないような財産の為に
時間と手間を強いられるのでは故人に対していい感情を持つはずがありません。

 相続人のいない方が遺産について何の情報も残しておかなければ
その調査だけで相続人間に負荷がかかりますし
財産の内容によってはまさに争奪戦と化す恐れが生じます。

 

【遺贈と言う選択】

 自分の死後に個人や団体などに財産を寄付する遺贈、
相続について検討された方であれば
名前だけは聞いたことがあるのではないでしょうか?

 遺贈自体は年々増加傾向にあるようで
日本承継寄付協会の「遺贈寄付白書」によりますと
2020年では1040件、約321億円が記録されています(金額は国税庁の出典)

 ただこの数字は「相続税を申告した人」のデータなので
相続税非課税だった人の実態は含まれていません。
実際の総額では上記の金額をかなり上回るのではと言われています。

 遺贈には2種類の遺贈があります。

【特定遺贈】

 例えば、
現金〇〇円を〇〇に遺贈
AB銀行の預金全額を〇〇に遺贈

等のように個別に財産を指定しての遺贈を指します。

【包括遺贈】

財産の全てを〇〇に遺贈
全財産の半分を〇〇に遺贈

等のように一定の割合で遺贈することを指します。

 ただ包括遺贈の場合は負の財産も含まれてしまうので
遺贈先に思わぬ迷惑が掛からぬよう本人が事前に自分の財産に
債務等の負の財産がないかどうか確認しておくことが必要です。

 また遺贈の場合、現金のみ受け付けるという団体は多く
この点も事前に意中の団体が現金以外の遺贈を受けるかどうか
事前に確認しておく必要があります。

 

【終わりに】

 過去にも何度かおひとり様の遺産の問題を採り上げてきました。

 ただ私の知る範囲では心身が元気なうちは関心は持たれても
なかなか真剣に遺贈先を検討するケースは少なく、
その後病気や事故で日常生活に支障を生じるようになると
急に無関心というか無気力になってしまい放置するケースが出ています。

「後のことは知ったことか!」
「もう面倒なことを考える気力はない」
といった投げやりな言葉を口にしたケースも
無かった訳ではありません。

 ただその結果、何の所縁もない国庫に納められたり
存在すら知らないような親族を喜ばせるだけでいいのでしょうか?

 逆に身近な友人知人や親しい身内には
多大な労力と時間といった迷惑をかけることも
知ったことか、で済ませることでいいのでしょうか?

 最期を全うするには
やはり効力のある遺言書の作成を始め
後見人の選定や見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約
等の契約を結ぶことによって後顧の憂いを軽減させることが可能です。

 それも体が元気なうちだからこその前提です、
是非、おひとり様であれば特にこの手の課題解消に向けて
何らかの行動を起こすことを強くお奨めします。

この記事の著者

寺田 淳
寺田 淳寺田淳行政書士事務所 代表
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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